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絵本

おすすめ絵本『ペネロペひめとにげだしたこねこ』

 先日、図書館で読んだ本。かわいらしくて楽しかったので、紹介します。

ペネロペひめと にげだしたこねこ (児童書)
 アイリン・マレー作
 美馬しょうこ訳
 徳間書店
 2016.1.31

     

 お城で退屈していたペネロペひめは、まっしろなこねこがピンクの毛糸にじゃれているのを見て、「いっしょにあそぼう」。でも、こねこは、おなかに毛糸を巻きつけたまま逃げ出した。こねこのあとにはピンクの毛糸がずんずんのびていく。ペネロペひめは毛糸をたどって、こねこを追って……さてさて、ねこは、どこへいくのかな。

 ページをめくるごとに、こねこが通っていった場所が現れる。お城のなかの部屋や階段や庭……。1本のピンクの毛糸があちこちに絡まったりしながら伸びていて、その先には、白いこねこの姿が小さく見える。糸をたどりながら、私たち読み手も、お城の中を見てまわれる。玉座やシャンデリアのぶらさがるひろい階段など、多くの女の子たちが憧れる世界だ。

 こねこと毛糸のひきおこした騒動は、読み手に生き生きと想像できる。きっと、こねこは、ぐるぐる、じくざぐ、めまぐるしく動き回ったのだろう。執事やメイド、兵隊といったお城で働く人たちが、半分困り顔、半分あきれ顔をしている。
 特にわたしが好きなのは、台所。こねこが鍋やフライパンを勢いよく鳴らす音が愉快だ。

 ペネロペひめといっしょにこねこのあとを追う動物たちが、いぬ、いんこ、クジャク……と順番に増えていくのも、おもしろい。

 ピンクやブルー、グリーンなどのきれいな色で明るく描かれていて、とにかく楽しいから、一度、手に取ってみて!

* 読み聞かせメモ
 普通に読み聞かせすると5~6分くらい。
 年中さん~。10数人までの読み聞かせにも使える。でも、おうちで、じっくりと絵を見ると、もっともっと楽しい。繰り返し楽しめると思う。

課題図書を読む『みずたまのたび』

 水の循環の絵本といえば『しずくのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ―ポーランドの絵本) 』が、まっさきに思いつく。顔があって、手足をもつしずくぼうやの元気あふれるお話だ。本作は、同じ水の循環をテーマにしているけれど、まったく趣が違う。

みずたまのたび
 アンヌ・クロザ
 こだま しおり
 西村書店

     

  わたしは ちいさな みずたま。
  ネコが みずを のんだ ボウルのそこに
  ひとつぶ のこった。
  そうだ、たびにでかけよう。

 ボウルにひとつぶ残っていたみずたまの「わたし」は、蒸気となって空へのぼり、雲に入り、そこからまた地上におちてきて、地中に入って、湧水になり、川にはいって……と旅をする。形を変えて移動しながら、さまざまな植物、動物に出会う。思えば、小さな水のたまは、なんとダイナミック旅をつづけているだろうか。

 このダイナミックな旅を、静かな語りの詩のような文章と、シックな絵が、しっとりとした味わいで伝えてくれる。
 ページをめくるごとに、みずたまが旅していく場所の風景、出会った動物たちが現れる。デザイン化され、落ち着いた配色のなかに、ときおりハイライトの色をさした絵は、みずみずしく、はっとするほど美しい。
 絵本をとじたあと、心を澄まして周りを見れば、すぐそこに、自然の美、自然の神秘を見いだせることに気づくだろう。
 この絵本は、水を循環を教えているだけではない。みずたまの旅を通して、自然の美しさ、センス・オブ・ワンダーを思い出させてくれる。さあ、あなたも、すてきな地球の旅をしよう。

*第62回青少年読書感想文全国コンクール 小学校低学年の部 課題図書

* 読み聞かせメモ
 年長さんから小学校低学年までの読み聞かせにもいい。
 水の循環について少しお話してから読むとわかりやすいかも。
 3~4分くらい。

 同じ水の循環をテーマにした絵本(7~8分)
   ↓
   

おすすめ絵本『おうさまのくつ』

おうさまのくつ
 ルイス・スロボドキン 作
 こみや ゆう訳
 瑞雲舎
 2015.12.1

     

 出版されたのは昨年の12月だけれど、原書は1956年。白黒ページと色刷りべーシが交互になっている形式で、その色も、赤、黄、青、黒とその混色で、白いページに淡く染色してある。なるほど、少し古い絵本だ。けれど、必要なことだけの描かれた、躍動感とユーモアあふれる絵、起承転結のある、楽しいストーリー。ほっとできるラスト。派手さはないけれど安心できる。こういう絵本を親子で楽しんでほしいなと思う。

 靴屋が、国中で上等な皮で金色に輝く靴をつくった。靴は、「王さまがはくようなくつ」とみんなから褒められて、すっかり、自分が「王様の靴」だとうぬぼれた。。
 ある日、靴屋が用事で店の外へ行ったとき、靴は、ポッカ、ポッカと歩いて、王様のお城へ向かう。途中で雨が降ってきて泥だらけに。そのままお城に入ったものだから、靴が歩いたあとには足跡がついていく。靴は台所でアップルパイをふみつけ、仕立て部屋で王様の白いマントをふみつけ、ペンキ塗りたての部屋に入って、城中に足跡をつけ……。

 うぬぼれちゃった靴は、左の靴と右の靴で、違う人格を持っている。なんといっても靴が主人公なのだから、ちゃんと、靴だけど人間らしいキャラクターをもっているのだ。この主人公の靴が、ぜんぜん悪気はないのに、たいへんなことをやらかしちゃって、読者をはらはらさせる。でも、当の靴は、お城の人たちに追いかけられるまで、まったくのん気なもの。そののほほん加減が愉快だ。
 いたずらするつもりはなかったのに、常識的にはいけないことをしていて、突然怒られちゃってびっくりという体験は、子どもたちによくあるだろうから、とても親しみを持てると思う。愛すべき靴のおはなし。

 

* 読み聞かせメモ
 普通に読み聞かせすると12分くらい。
 年長さん~。おうちでゆっくり読むなら年中さんくらいでも楽しめると思う。
 絵の小さなところがあるので、十数人ぐらいまでの小さな集まりで。

おすすめ絵本 『おしゃれなクララとおばあちゃんのぼうし』

おしゃれなクララとおばあちゃんのぼうし (児童書)
 エイミー・デ・ラ・ヘイ文
 エミリー・サットン絵
 たかお ゆうこ訳
 徳間書店
 2015.12.31発行

     

ちいさなちいさな―めにみえないびせいぶつのせかい 』で、はっとするほど美しく、それでいて科学的に、微生物を描いて見せてくれたエミリー・サットン。日本で紹介されるのは『クリスマスイヴの木 』についで3冊目となる。

 人形の服や帽子作りの好きな女の子が、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館を訪ねて、素敵な冒険をする。

 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、美術品、工芸品、デザインなど膨大なコレクションを所有する博物館だ。サットンの絵は、緻密で色鮮やかで、この博物館を描くのにぴったり。繊細なパターンのデザインをちらぺて、建物から展示品、中のカフェの様子まで、美しく、そしてきっちりと正確に紹介してくれている。

 ただ、ロンドンを舞台にしているため、日本の子どもたちのなかでは、読者が限られるかも。けれど、洋服や帽子の好きな子、美しい美術や工芸、デザインに興味を持つ子には、憧れの世界となる絵本だ。そんな子がいたら、ぜひ読んであげてほしい。

* 読み聞かせメモ
 普通に読み聞かせすると8分くらい、小学生の低学年~。
 
細かいところまでじっくり見て楽しみたいのでごく少人数に。
 気に入ったら、手元において繰り返し鑑賞してほしいな。

おまけ
 主人公の女の子の名前はクララ・ボタン。この名前だけにボタンが……。(絵本でチェックしてね♪

      ←課題図書にもなっている。

復刊してほしい『クリスマスのうさぎさん』

 12月5日の図書館分館で読みたかったのに、家に忘れるというポカをして読めなくて、いまだに惜しく思っているクリスマス本の紹介します。

クリスマスのうさぎさん (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
("The Christmas Bunny")
 
 ウィルとニコラス作 わたなべしげお訳 福音館書店 1985 1953(原書)

   

 毎年クリスマスシーズンになると、図書館がいろいろなクリスマス本を出して並べてくれる。そのなかにこの古風な1冊をみつけた。古くさそうだけれど、絵が生き生きしていて、とてもひかれる。ゆっくり読みたいと、借りて家に帰ってよんでみたら、あらら、とっても素敵!!
 クリスマスイブの日に、小さな男の子デービーが、森で動物たちと出会い、それからサンタクロースにも出会い、楽しい時を過ごす。動物たちはサンタさんからプレゼントをもらい、最後にデービーも。デービーがもらったのは……。

 クリスマスの前日のわくわく感、だいすきな動物たちと友だちになる喜び、そして、なによりもサンタクロースの愛にふれるあたたかさ。小さな子がクリスマスに感じる期待と喜び、幸せが、このシンプルな物語にあふれている。
 おそらく3~6歳くらいの子なら、絵本にするっと入りこみ、絵の隅々までながめて、動物たち、サンタクロースと過ごすすてきなクリスマスイブを大いに楽しむだろう。

 まだ動物と話ができる小さな小さな人たちに、ぜひぜひ読んでほしい本。わたしも手元において、毎年、おはなし会で読みたいと思ったのだけれど、なんと絶版!! 図書館で借りた本も、たくさんの人に読まれたのだろう、だいぶ痛んできている。修復できなくなったらどうしよう。出版社さん、お願いです。復刊してください。

      

課題図書を読む『ちいさなちいさな めにみえない びせいぶつのせかい』

イラストが美しく親しみやすい科学絵本です。

ちいさなちいさな―めにみえないびせいぶつのせかい
 ニコラ・デイビス文
 エミリー・サットン絵
 越智典子訳
 出川洋介監修
 ゴブリン書房

     

 微生物ときくと、細菌とかウィルスとか腐るときの菌なんかを想像する……ビフィズス菌や納豆菌とか善いものもあると知っているけれど、やっぱりあんまりきれいな印象がなくて敬遠しちゃう。そんな微生物を、アイボリーの地に落ち着いた美しい配色の絵で、とてもに素敵に見せてくれた。画期的な絵本だ。
 なにしろ、微生物は裸眼では見えないから、知識があっても実感しにくい。そこで、まずはどんなに小さいかを、ありの触覚1本にいる微生物は、ニューヨークに住む人の2倍より多い。スプーン一杯の中の微税物は……と、実感できるように説明してくれた。それから、微生物の種類では大きさ、形……。微生物がすること。そして、これまた、とても実感しやすく、そして美しく描かれている増え方。
 この絵本で、目に見えない微生物のことが、私にも少し見えてき。この絵本を機会に微生物に興味を持って、将来研究する子も出てくるのではないかと思う。
 最後の見開きページにでてくるのは、宇宙に浮かぶ地球。ともに書かれている美しい文章が、ちいさな微生物のすごとをまた実感させてくれる。

*第61回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の部 課題図書

課題図書を読む『ぼくはうちゅうじん』

 現在、大人気のおふたり、中川ひろたかさんとはたこうしろうさんによる、洗練された作品。はたさんはなんと、低学年向けの課題図書『あした あさって しあさって (おはなしだいすき) 』の挿し絵も担当している。

ぼくはうちゅうじん (ちきゅうのふしぎ絵本)
 中川ひろたか文
 はた こうしろう絵
 アリス館

     

 キャンプで泊まった、ぼくとおとうさんとおかあさんの三人家族は、夜明け前のまだ暗いうちに起きだして日の出を待つ。そのあいだに星空を眺め、星座、月、太陽、地球、惑星、宇宙について会話を弾ませる。

 親子のさりげない会話で、宇宙についての知識を伝える。たったの32ページで、子ども読者が興味を持ちそうなことをダイジェストしてさらっと教え、自分たちも宇宙の一員であると実感するところまで、読者をつれていく。宇宙科学への扉となる絵本だ。
 こうした宇宙科学の知識絵本はたくさんある。そのなかで、この絵本が特異なのは、家族がいっしょにいる、ぬくもりと安心感に包まれていることだ。まるで宇宙がわたしたちをやさしく包み込むように。
 髪の長くて、きれいなおかあさん。メガネをかけて、真面目そうなおとうさん。ふたりはとても仲が良くて、宇宙のことをよく知っていて、教えたがり(プラス、お父さんはおやじギャグ好き)だ。息子のぼくは両親の話を興味を持って聞き、素直な反応を見せる。
 キャンプにきて、満天の星空の下にいるという非日常のわくわく感が、三人をあたたかな雰囲気にしているのかもしれない。でもとにかく、絵本の三人はほほえましくて、こんな風でいたいなと、誰もがが憧れるような家族で、読んでいるうち、読者はそのぬくもりと安心感に包まれる。
 はたさんの絵は、きっと科学的事実に沿っていると思う。でも、ぼおっと輝く三日月、燃える太陽、様々な色のの惑星、それに青い海、緑と茶の陸地、白い雲の地球など、美しく描きだしている。

 さあ、夜空を見上げて、家族で宇宙の話をしよう。
 でも、この絵本に出てくる両親のように、宇宙のことをよく知らなくて、話してあげられないし、子どもが素直に聞いてくれるかどうか不安……なんて、思ったら、この絵本を読めばだいじょうぶ。壮大な宇宙のなかで、家族がいっしょにいるうれしさが、ほわっと湧き上がってくるだろう。

*第61回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

課題図書を読む『マッチ箱日記』

課題図書を読む『』

マッチ箱日記
 ポール・フライシュマン作
 バグラム・イバトゥーリン絵
 島式子・島玲子訳
 BL出版

     

 大きな箱につめられたたくさんの古びたマッチ箱。ひいおじいちゃんが、まだ読み書きができない幼い頃の、思い出の品が入っている。「わしの日記だよ」と、ひいじいちゃんはひ孫に自分の半生を話してきかせる。

 ひとつめのマッチ箱にはオリーブの種。ひいじいちゃんは、イタリアの貧しい家に生まれた。イタリアにはオリーブの樹がたくさんあって、おなかがすくとオリーブの種をなめてがまんした。ふたつめには男の人の古い写真。アメリカに出稼ぎにいっていたひいじいちゃんの父親が、送ってくれた写真だ。
 3つめ、4つめ……マッチ箱の日記はまだまだ続く。ひいおじいちゃんは父親を追って、家族とアメリカにわたって父親と再会。家族はアメリカ国内を転々として働きづめに働き、やがて、ひいおじいちゃんは、家族の未来を切り開くために、学校に通い、読み書きをおぼえた。

 ひいおじいちゃんの語る言葉と、セピア色にやけた白黒写真のような絵が、イタリア移民の家族の歴史を教えてくれる。貧しさから逃れるために渡米した家族だったが、アメリカでもやはり貧しくて、辛いできごともあった。小さかったおじいちゃんは、未知に向かって、希望に胸を膨らませ、不安におびえ、失敗をし、たまの楽しみに胸躍らせる。

 現在のひいじいちゃんは赤いベストを着ている。その赤色や、背景の家具や調度品の色調はあたたかく、暗いトーンの過去の絵と対照的だ。
 ひいくおじいちゃんは、白髪で杖をつき、顔も手もしわだらけ。けれど、満ち足りていて、顔のしわが、穏やかな表情をつくっている。たくさんの苦労をのりこえて、人生を深く知る人。マッチ箱の日記に残された思い出があってこそ、いまのひいじいちゃんがあるのだ。

*第60回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の部 課題図書

課題図書を読む『いっしょだよ』

 また、課題図書を読む季節が来ました!! ところが、昨日、図書館で課題図書の本を探したのだけれど、棚に見つからない。検索するとちゃんとあるはずだけれど……昨年はたしか、隠して、いえいえ、課題図書の準備のために別場所に保管してあった。今年もそれで見つからなかったのだろうか。かろうじて、その前に、偶然にも借りてあった絵本をまずは紹介。

いっしょだよ

 小寺卓矢写真・文
 アリス館

     

 木の芽、野の花、きのこ……それぞれが、同じ仲間と、さらにはほかの生物といっしょにいる、森の自然を、美しい写真と詩で見せてくれる絵本。
 いろいろなものが集まっている自然の神秘を教える科学絵本だが、さらに哲学的なメッセージをも伝えている。――「みんな」は、ひとかたまりではなく、それぞれが違う「ひとり」と「ひとり」。ちがういろいろな「ひとり」が集まって、つながっているんだよ、と――。
 まんなかあたりで出てくる次のフレーズが、読み手のこどもたちを引き寄せる。メッセージは、しずかにそうっと、心にしみこんでいくだろう。

  あなたは
  だれと いっしょかな?

*第59回青少年読書感想文全国コンクール 小学校低学年の部 課題図書

課題図書を読む『パンケーキをたべるサイなんていない』

 こんなサイ、いるでしょうか?

パンケーキをたべるサイなんていない?
 アンナ・ケンプ文
 サラ・オギルヴィー絵
 かどのえいこ訳
 BL出版

    

 パパもママも、デイジーの話をちっとも聞いてくれない。家に大きな紫色のサイがいて、パンケーキを食べちゃうっていっているのに。それで、サイはずっと家にいて、デイジーとすっかり仲良しになった。そのうち、パンケーキがなくなるのにママとパパはようやく気づいたけれど、サイには気づいてくれない。「ママとパパは、いつもとおくにいるみたい」

 親が子どもの話を聞いてくれない、信じてくれないと、多くの子どもたちが感じている。でもたいていの親たちは、ちゃんと聞いてるつもりではないだろうか。どうして、そんな行き違いができるのだろう。人間は自分に必要なことだけを聞き分ける能力があるらしい。子どもの話すことの内容を、親たちが必要でないと思っていなければ、あるいは、そんなことありえないと思っていれば、「なにをつまらないこといっているのよ」で一蹴してしまう。大人の常識、先入観が邪魔しているのかもしれない。子どもたち、ごめんなさい。親たちに、子どもの話を聞いていない自覚はないのだ。

 子どもが見て、考えていることが、親には、見えず、信じられず、理解できない。そうした親子の隔たりを、この作品は、楽しいおはなしで表している。

 デイジーの言っていることが正しいとわかるのは、ママとパパにサイが見えたからではなく、ある公的な文章をママとパパが読んだから。同じことでも、自分の信頼している大人のいうことならすんなり受け入れる、大人の愚かさを描いているのが、この絵本の鋭いところ。
 こう偉そうに書いている私自身も、紫色のサイは、実はデイジーのさびしい心が生み出したお友達という読み方もできる、というような分析をしながら、絵本を読んだりして、どうしようもなく大人だ。そんなこと書きながら、絵本を読み返し、やはり、紫色のサイのおはなしはデイジーの心になかで起きていたと思ったりもする。

 さて、子どもたちはどんなふうに読むのだろう。紫色のサイが登場して、「ありえない~」と面白がり(子どもたちだって、実際に紫色のサイがいるなんて思っていな。でも、絵本の中では実在するとちゃんとわかってる)、デイジーの言い分や寂しさ、不満を共感するだろう。そして、両親が急にものわかりがよくなってハッピーエンドを迎えたことに、心から満足するだろう。こんな両親がほしいと思うかもしれない。
 そう、紫色のサイがデイジーの家にいようと、心の中にいようと、子どもの話をきちんときく親を、子どもたちはもっとも望んでいるのだ。

まさかおさかな 』(フェイ・ロビンソン文 ウエイン・アンダースン絵 岡田淳訳 BL出版)も、同じような親子関係を描いた作品。読み比べてみると面白い。

*第58回青少年読書感想文全国コンクール 小学校低学年の部 課題図書

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