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絵本

課題図書を読む『耳の聞こえないメジャーリーガー ウィリアム・ホイ』

 絵本のタイトルのとおり、「耳の聞こえないメジャーリーガー、ウィリアム・ホイ」の伝記なのだが、この人は、1862年生まれ。南北戦争の時、生まれた人がプロ野球選手になっていたというアメリカのプロ野球の歴史に、まず、無知な私は驚いてしまった。ウィキベディアで調べると、1860年代初めにはプロ野球選手が存在していて、1868年に初めてプロだけのチームができたという。ラジオ放送もまだ行われていない頃のプロ野球とはどんなだろう? 人々は、じかに観戦するほかに、新聞などで勝敗や試合の状況を知ったのだろうか? 絵本とは全く関係ない素朴な疑問ですが……。。

耳の聞こえないメジャーリーガー ウィリアム・ホイ
 ナンシー・チャーニン文
 ジェズ・ツヤ絵
 斉藤洋訳
 光村教育図書

     

 ウィリアム・エルスワース・ホイは、耳が聞こえない障がいを持ちながら、1886年、野球選手になり、1888~1902年メジャーリーガーとして活躍した。彼は、ろう学校の野球チームに入りたくて練習に励み上達したが、身長が低いという理由でチームに入れなかった。卒業後、靴の修理店につとめていたとき、偶然ある野球チームの人に認められ入団のチャンスを得る。だが、耳が聞こえないからと給料を下げられたり、同僚から陰口を言われたりした。それでも、ウィリアムはチームをいくつも移り、がんばり続けた。
 ある日、3振したがストライクという審判の声が聞こえず、そのままバッターボッスに立ち続けて選手や観衆から嘲笑を受ける。この時代、審判は声だけで判定を表していたのだ。ここの出来事を機に、ウィリアムは審判のジェスチャーを審判に提案、さらにはチーム内のサインを考える。それが、今の審判のジェスチャーやチームのサインにつながる。その後、彼はメジャーリーグの選手となり活躍する。

 ウィリアムは、大好きな野球をたゆまず努力し続けて夢を達成した。しかも、たに障がいを乗り越えただけでない。障がいに関係なくプレイできるよう、野球のやり方を変えたのだ。さらにその新しいやり方は、他の選手や観衆にとってもよいものとなった。
 学校のチームに入れなかった時も、プロに入って障がいのために不公平な扱いを受けた時も、ウィリアムは前向きだった。つねに自分を卑下することなく、プライドを持っていたのだと思う。それは、お母さんが、ウィリアムの生まれた時からずっと、彼の成長をにこにこと笑って見守って、彼の自尊心を育ててきたからだろう。彼とお母さんとのつながりが、絵本ではさりげなく描かれていて、あたたかい気持ちにしてくれる。

 前向きな努力の素晴らしさを伝える一方で、この絵本はバリアフリーの素晴らしいお手本にもなっている。ウィリアムは、他の選手と同等にプレイする権利を堂々と主張し、審判やチームメイトはそれを真摯に聞き入れ、野球をさらに魅力あるスポーツにした。
 障がい者の困難を、他の人たちは気づけなかったり、理解できていなかったりする。分っていながら、多数派である自分たちのやり方を意固地に守りたがることもある。そうした障がい者とそうでないもののバリアをウィリアムは、野球への愛で取り払った。また、ウィリアムの提案を真摯にうけいれた当時の審判や選手たちも素晴らしい。
 すべての人を励ますバリアフリーな絵本。

*第63回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

課題図書を読む『干したから…』

 表紙はカラフルなドライフルーツ、後表紙は茶系配色の魚や穀物の写真。みんな干した食べ物だ。干した食べ物がこんなに多いことに改めて気づいた。

干したから… (ふしぎびっくり写真えほん)
 森枝卓士写真・文
 フレーベル館

     

 中表紙のタイトルの下には、オレンジがかった茶色をした楕円の乾物の写真があって、「さて、問題です。これ、なーんだ?」。ページをめくると、左ページに真っ二つにした、瑞々しい細長いトマト、右ページでは、干されてしわしわなっていく様子が紹介されている。ドライトマトは日本の家庭ではあまりなじみではないから、その変化に目を見張る小さな読者もいるのではないだろうか。

 かつおぶし、するめ、切り干し大根、のり、干しブドウ……。私たちは、すでに干されて袋入りになったものを買ってくるから、干すという過程を、普段意識しないが、考えれば、日本ではたくさんの干した食べ物がある。
 では、干すとどうなるのか? そのままでも食べられるのに、わざわざ干すのはなぜか? 世界では他にどんな干した食べ物があるか? この絵本がたくさんの写真を使って、きちんと言葉にして、わかりやすく教えてくれる。そこには驚きの発見がいくつもある。
 まず、イカと大根。干す前と後の姿を写真で並べて見てみよう。こんなに姿が違う。大根は、同じ重さでこんなにかさが違う! 普段、調理し、食べているものなのに、その差は本当に驚きだった。ページをめくるとミカン。ミカンを使って、干すことで変わるのはなにか、なぜ干すのかを、絵と言葉でしっかり説明してくれる。ミカンだからこそ、とてもわかりやすい。

 世界各地の乾物も多数紹介されている。魚や唐辛子は日本にもあるが、その国ならではのものもたくさんある。ネズミの干物には、ぎょっとしないではいられない。でも、それ以上に、はっとさせられたのは、米、パスタも、干した保存食だということ。日常当たり前に食べているからだろうか? 米やパスタが保存食と考えたこともなかった。さらに、米などの干した穀物が主食になった所以にも、気づかされ、なるほどと納得した。
 干した食べ物には、栄養素がギュッと凝縮されているのと同じように、食べて生きるための祖先からの叡智が凝縮されているのだ。

 巻末には、自分で干す方法が載っている。100円ショップの品物を使って干せることが付記されているから、これはもう、自分でやってみるしかない。
 さらにあとがきで、干すとはまた違う、一風変わった保存方法も紹介されていて、これまたなるほどと感心した。

 干物なんて地味なものに驚きの発見があって、世界に視野が広がっていく。課題図書にふさわしい作品。

*第63回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

課題図書を読む『すばこ』

 中高学年の読み聞かせで何度か学校で読んだけれど、低学年の課題図書となりました。

すばこ
 キム・ファン文
 イ・スンウォン絵
 ほるぷ出版

    

 巣箱は人がつくった鳥の家。でも、はじめは、なんと、鳥を捕まえるワナだったのだ! はじめに巣箱をつくったのは、ドイツのベルレプシュ男爵という、舌を噛みそうな名前の貴族で、彼は広大な領地を所有していた。その広さは日本では信じられないほどの規模だ。巻末の説名によれば、13ヘクタールの森と40ヘクタールの果樹園という。鳥が大好きな男爵は、もっと多くの鳥にきてほしいと考えて、鳥たちが安心して子育てできる家をつくってやればいいと思いついた。そして、数万本の木のある森に数千個(巻末の説明によると3000個)の巣箱をかけた。
 しばらくして、男爵の領地のある地域に害虫が大発生し、植物の葉を食べてしまい、森や林がほとんど枯れてしまう。ところが男爵の森だけは……。

 巣箱が世界中に広がった経過、巣箱の種類などをすっきりした美しい絵で教えてくれる。本文の最後は、自然に対する人間のありかたへの作者の願いで終わっている。
 巣箱は小鳥を観察するために作ったものだとばかり思っていたので、巣箱にこんな歴史、そして働きがあるなんて、驚きだった。

 私の家の庭にも、小鳥がやってくる。スズメ、メジロ、ヤマガラ……。庭木の枝でさえずったり、土をつんつんしたりする(種や虫を食べているのだろうか)姿は可愛らしく、見ているだけで心が和むから大歓迎だ。巣箱を作ってみたいなと思ったこともある。でも、イチゴがなる季節のヒヨドリだけは嫌いで追い払う。赤くなったばかりのイチゴを食べてしまうからだ。こんな風に、人間は自分勝手なものだ。
 この絵本は、そうした自分勝手な人間と自然の関係について、考えるきっかけともなるだろう。でも、巣箱について知るだけでも、十分に楽しい。この絵本から、バードウォッチングや巣箱づくりと世界を広げてもいけるだろう。

*第63回青少年読書感想文全国コンクール 小学校低学年の部 課題図書

おすすめ絵本『ペネロペひめとにげだしたこねこ』

 先日、図書館で読んだ本。かわいらしくて楽しかったので、紹介します。

ペネロペひめと にげだしたこねこ (児童書)
 アイリン・マレー作
 美馬しょうこ訳
 徳間書店
 2016.1.31

     

 お城で退屈していたペネロペひめは、まっしろなこねこがピンクの毛糸にじゃれているのを見て、「いっしょにあそぼう」。でも、こねこは、おなかに毛糸を巻きつけたまま逃げ出した。こねこのあとにはピンクの毛糸がずんずんのびていく。ペネロペひめは毛糸をたどって、こねこを追って……さてさて、ねこは、どこへいくのかな。

 ページをめくるごとに、こねこが通っていった場所が現れる。お城のなかの部屋や階段や庭……。1本のピンクの毛糸があちこちに絡まったりしながら伸びていて、その先には、白いこねこの姿が小さく見える。糸をたどりながら、私たち読み手も、お城の中を見てまわれる。玉座やシャンデリアのぶらさがるひろい階段など、多くの女の子たちが憧れる世界だ。

 こねこと毛糸のひきおこした騒動は、読み手に生き生きと想像できる。きっと、こねこは、ぐるぐる、じくざぐ、めまぐるしく動き回ったのだろう。執事やメイド、兵隊といったお城で働く人たちが、半分困り顔、半分あきれ顔をしている。
 特にわたしが好きなのは、台所。こねこが鍋やフライパンを勢いよく鳴らす音が愉快だ。

 ペネロペひめといっしょにこねこのあとを追う動物たちが、いぬ、いんこ、クジャク……と順番に増えていくのも、おもしろい。

 ピンクやブルー、グリーンなどのきれいな色で明るく描かれていて、とにかく楽しいから、一度、手に取ってみて!

* 読み聞かせメモ
 普通に読み聞かせすると5~6分くらい。
 年中さん~。10数人までの読み聞かせにも使える。でも、おうちで、じっくりと絵を見ると、もっともっと楽しい。繰り返し楽しめると思う。

課題図書を読む『みずたまのたび』

 水の循環の絵本といえば『しずくのぼうけん (世界傑作絵本シリーズ―ポーランドの絵本) 』が、まっさきに思いつく。顔があって、手足をもつしずくぼうやの元気あふれるお話だ。本作は、同じ水の循環をテーマにしているけれど、まったく趣が違う。

みずたまのたび
 アンヌ・クロザ
 こだま しおり
 西村書店

     

  わたしは ちいさな みずたま。
  ネコが みずを のんだ ボウルのそこに
  ひとつぶ のこった。
  そうだ、たびにでかけよう。

 ボウルにひとつぶ残っていたみずたまの「わたし」は、蒸気となって空へのぼり、雲に入り、そこからまた地上におちてきて、地中に入って、湧水になり、川にはいって……と旅をする。形を変えて移動しながら、さまざまな植物、動物に出会う。思えば、小さな水のたまは、なんとダイナミック旅をつづけているだろうか。

 このダイナミックな旅を、静かな語りの詩のような文章と、シックな絵が、しっとりとした味わいで伝えてくれる。
 ページをめくるごとに、みずたまが旅していく場所の風景、出会った動物たちが現れる。デザイン化され、落ち着いた配色のなかに、ときおりハイライトの色をさした絵は、みずみずしく、はっとするほど美しい。
 絵本をとじたあと、心を澄まして周りを見れば、すぐそこに、自然の美、自然の神秘を見いだせることに気づくだろう。
 この絵本は、水を循環を教えているだけではない。みずたまの旅を通して、自然の美しさ、センス・オブ・ワンダーを思い出させてくれる。さあ、あなたも、すてきな地球の旅をしよう。

*第62回青少年読書感想文全国コンクール 小学校低学年の部 課題図書

* 読み聞かせメモ
 年長さんから小学校低学年までの読み聞かせにもいい。
 水の循環について少しお話してから読むとわかりやすいかも。
 3~4分くらい。

 同じ水の循環をテーマにした絵本(7~8分)
   ↓
   

おすすめ絵本『おうさまのくつ』

おうさまのくつ
 ルイス・スロボドキン 作
 こみや ゆう訳
 瑞雲舎
 2015.12.1

     

 出版されたのは昨年の12月だけれど、原書は1956年。白黒ページと色刷りべーシが交互になっている形式で、その色も、赤、黄、青、黒とその混色で、白いページに淡く染色してある。なるほど、少し古い絵本だ。けれど、必要なことだけの描かれた、躍動感とユーモアあふれる絵、起承転結のある、楽しいストーリー。ほっとできるラスト。派手さはないけれど安心できる。こういう絵本を親子で楽しんでほしいなと思う。

 靴屋が、国中で上等な皮で金色に輝く靴をつくった。靴は、「王さまがはくようなくつ」とみんなから褒められて、すっかり、自分が「王様の靴」だとうぬぼれた。。
 ある日、靴屋が用事で店の外へ行ったとき、靴は、ポッカ、ポッカと歩いて、王様のお城へ向かう。途中で雨が降ってきて泥だらけに。そのままお城に入ったものだから、靴が歩いたあとには足跡がついていく。靴は台所でアップルパイをふみつけ、仕立て部屋で王様の白いマントをふみつけ、ペンキ塗りたての部屋に入って、城中に足跡をつけ……。

 うぬぼれちゃった靴は、左の靴と右の靴で、違う人格を持っている。なんといっても靴が主人公なのだから、ちゃんと、靴だけど人間らしいキャラクターをもっているのだ。この主人公の靴が、ぜんぜん悪気はないのに、たいへんなことをやらかしちゃって、読者をはらはらさせる。でも、当の靴は、お城の人たちに追いかけられるまで、まったくのん気なもの。そののほほん加減が愉快だ。
 いたずらするつもりはなかったのに、常識的にはいけないことをしていて、突然怒られちゃってびっくりという体験は、子どもたちによくあるだろうから、とても親しみを持てると思う。愛すべき靴のおはなし。

 

* 読み聞かせメモ
 普通に読み聞かせすると12分くらい。
 年長さん~。おうちでゆっくり読むなら年中さんくらいでも楽しめると思う。
 絵の小さなところがあるので、十数人ぐらいまでの小さな集まりで。

おすすめ絵本 『おしゃれなクララとおばあちゃんのぼうし』

おしゃれなクララとおばあちゃんのぼうし (児童書)
 エイミー・デ・ラ・ヘイ文
 エミリー・サットン絵
 たかお ゆうこ訳
 徳間書店
 2015.12.31発行

     

ちいさなちいさな―めにみえないびせいぶつのせかい 』で、はっとするほど美しく、それでいて科学的に、微生物を描いて見せてくれたエミリー・サットン。日本で紹介されるのは『クリスマスイヴの木 』についで3冊目となる。

 人形の服や帽子作りの好きな女の子が、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館を訪ねて、素敵な冒険をする。

 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、美術品、工芸品、デザインなど膨大なコレクションを所有する博物館だ。サットンの絵は、緻密で色鮮やかで、この博物館を描くのにぴったり。繊細なパターンのデザインをちらぺて、建物から展示品、中のカフェの様子まで、美しく、そしてきっちりと正確に紹介してくれている。

 ただ、ロンドンを舞台にしているため、日本の子どもたちのなかでは、読者が限られるかも。けれど、洋服や帽子の好きな子、美しい美術や工芸、デザインに興味を持つ子には、憧れの世界となる絵本だ。そんな子がいたら、ぜひ読んであげてほしい。

* 読み聞かせメモ
 普通に読み聞かせすると8分くらい、小学生の低学年~。
 
細かいところまでじっくり見て楽しみたいのでごく少人数に。
 気に入ったら、手元において繰り返し鑑賞してほしいな。

おまけ
 主人公の女の子の名前はクララ・ボタン。この名前だけにボタンが……。(絵本でチェックしてね♪

      ←課題図書にもなっている。

復刊してほしい『クリスマスのうさぎさん』

 12月5日の図書館分館で読みたかったのに、家に忘れるというポカをして読めなくて、いまだに惜しく思っているクリスマス本の紹介します。

クリスマスのうさぎさん (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
("The Christmas Bunny")
 
 ウィルとニコラス作 わたなべしげお訳 福音館書店 1985 1953(原書)

   

 毎年クリスマスシーズンになると、図書館がいろいろなクリスマス本を出して並べてくれる。そのなかにこの古風な1冊をみつけた。古くさそうだけれど、絵が生き生きしていて、とてもひかれる。ゆっくり読みたいと、借りて家に帰ってよんでみたら、あらら、とっても素敵!!
 クリスマスイブの日に、小さな男の子デービーが、森で動物たちと出会い、それからサンタクロースにも出会い、楽しい時を過ごす。動物たちはサンタさんからプレゼントをもらい、最後にデービーも。デービーがもらったのは……。

 クリスマスの前日のわくわく感、だいすきな動物たちと友だちになる喜び、そして、なによりもサンタクロースの愛にふれるあたたかさ。小さな子がクリスマスに感じる期待と喜び、幸せが、このシンプルな物語にあふれている。
 おそらく3~6歳くらいの子なら、絵本にするっと入りこみ、絵の隅々までながめて、動物たち、サンタクロースと過ごすすてきなクリスマスイブを大いに楽しむだろう。

 まだ動物と話ができる小さな小さな人たちに、ぜひぜひ読んでほしい本。わたしも手元において、毎年、おはなし会で読みたいと思ったのだけれど、なんと絶版!! 図書館で借りた本も、たくさんの人に読まれたのだろう、だいぶ痛んできている。修復できなくなったらどうしよう。出版社さん、お願いです。復刊してください。

      

課題図書を読む『ちいさなちいさな めにみえない びせいぶつのせかい』

イラストが美しく親しみやすい科学絵本です。

ちいさなちいさな―めにみえないびせいぶつのせかい
 ニコラ・デイビス文
 エミリー・サットン絵
 越智典子訳
 出川洋介監修
 ゴブリン書房

     

 微生物ときくと、細菌とかウィルスとか腐るときの菌なんかを想像する……ビフィズス菌や納豆菌とか善いものもあると知っているけれど、やっぱりあんまりきれいな印象がなくて敬遠しちゃう。そんな微生物を、アイボリーの地に落ち着いた美しい配色の絵で、とてもに素敵に見せてくれた。画期的な絵本だ。
 なにしろ、微生物は裸眼では見えないから、知識があっても実感しにくい。そこで、まずはどんなに小さいかを、ありの触覚1本にいる微生物は、ニューヨークに住む人の2倍より多い。スプーン一杯の中の微税物は……と、実感できるように説明してくれた。それから、微生物の種類では大きさ、形……。微生物がすること。そして、これまた、とても実感しやすく、そして美しく描かれている増え方。
 この絵本で、目に見えない微生物のことが、私にも少し見えてき。この絵本を機会に微生物に興味を持って、将来研究する子も出てくるのではないかと思う。
 最後の見開きページにでてくるのは、宇宙に浮かぶ地球。ともに書かれている美しい文章が、ちいさな微生物のすごとをまた実感させてくれる。

*第61回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の部 課題図書

課題図書を読む『ぼくはうちゅうじん』

 現在、大人気のおふたり、中川ひろたかさんとはたこうしろうさんによる、洗練された作品。はたさんはなんと、低学年向けの課題図書『あした あさって しあさって (おはなしだいすき) 』の挿し絵も担当している。

ぼくはうちゅうじん (ちきゅうのふしぎ絵本)
 中川ひろたか文
 はた こうしろう絵
 アリス館

     

 キャンプで泊まった、ぼくとおとうさんとおかあさんの三人家族は、夜明け前のまだ暗いうちに起きだして日の出を待つ。そのあいだに星空を眺め、星座、月、太陽、地球、惑星、宇宙について会話を弾ませる。

 親子のさりげない会話で、宇宙についての知識を伝える。たったの32ページで、子ども読者が興味を持ちそうなことをダイジェストしてさらっと教え、自分たちも宇宙の一員であると実感するところまで、読者をつれていく。宇宙科学への扉となる絵本だ。
 こうした宇宙科学の知識絵本はたくさんある。そのなかで、この絵本が特異なのは、家族がいっしょにいる、ぬくもりと安心感に包まれていることだ。まるで宇宙がわたしたちをやさしく包み込むように。
 髪の長くて、きれいなおかあさん。メガネをかけて、真面目そうなおとうさん。ふたりはとても仲が良くて、宇宙のことをよく知っていて、教えたがり(プラス、お父さんはおやじギャグ好き)だ。息子のぼくは両親の話を興味を持って聞き、素直な反応を見せる。
 キャンプにきて、満天の星空の下にいるという非日常のわくわく感が、三人をあたたかな雰囲気にしているのかもしれない。でもとにかく、絵本の三人はほほえましくて、こんな風でいたいなと、誰もがが憧れるような家族で、読んでいるうち、読者はそのぬくもりと安心感に包まれる。
 はたさんの絵は、きっと科学的事実に沿っていると思う。でも、ぼおっと輝く三日月、燃える太陽、様々な色のの惑星、それに青い海、緑と茶の陸地、白い雲の地球など、美しく描きだしている。

 さあ、夜空を見上げて、家族で宇宙の話をしよう。
 でも、この絵本に出てくる両親のように、宇宙のことをよく知らなくて、話してあげられないし、子どもが素直に聞いてくれるかどうか不安……なんて、思ったら、この絵本を読めばだいじょうぶ。壮大な宇宙のなかで、家族がいっしょにいるうれしさが、ほわっと湧き上がってくるだろう。

*第61回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

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