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2020年3月 5日 (木)

小学校女子の微妙な心を描く、あいちゃん、ともちゃんシリーズ

 この数年、くすのきしげのりさんの絵本が多数出版され、おはなし会でもよく読まれている。そこには、子どもの日常生活に起こる出来事から、子どもが悩み考え、健やかに成長していく姿がある。その姿は、子どもたちにとっては共感しやすく、子どもの成長を願う大人にとって、喜ばしく、感動的だ。子どもに接する自身の態度を反省させられることもある。
 くすのきさんは、長年教職を勤め、たくさんの子に出会ってこられた。様々な個性をもつ子どもたちの中のひとりに焦点をあて、ある出来事を通して、その子の気持ちの変化を描き出すのが、とても巧みだ。

 

ええところ (絵本単品)』『へなちょこ』『ひとりでぼっち』は、
ええところ (絵本単品)』と『へなちょこ』は、親友のあいちゃん、ともちゃんが、それぞれ主人公。あいちゃんは、背が低く、運動も苦手な、おとなしい子。ともちゃんは、運動が得意で、だれとでもはきはき話せる活発な子。対照的なふたりなのだが、だからこそ相性がいい。『ええところ (絵本単品)』では劣等感を持つあいちゃんの「ええところ」を、ともちゃんがみつけて励まし、『へなちょこ』では、何でもできるからこそ隠したい、ともちゃんの「へなちょこ」な弱点をあいちゃんが受けとめ、その克服を助ける。
 2作品ともに共通しているのは、あいちゃんとともちゃん、ふたりが相手を思いやるやさしさ。ふたりの友情のような、裏のない、ほっとできる関係は、女子が最も求めているものだろう。

へなちょこ』の出版からから約7年たって、『ひとりでぼっち』で、あいちゃん、ともちゃんのクラスメート、はなちゃんが登場した。はなちゃんは、引っ込み思案で空想好きな子。いじめを受けているわけではないけれど、いつもぐずぐずしているうち、気がつくと「ひとりぼっち」になっている。ひとりでいるのも好きだから、まあ、いいかと思っているけれど、内心、ちょっぴり寂しい。それで、いっそ自分から進んでひとりぼっちになって、「ひとりでぼっち」をしようと考える。
 ひとりが好き、でも、いつも、みんなのなかで、ひとりは寂しい、だけど、仲間に入る勇気がない。だから、ひとりでひとりを楽しもう。そんなさても複雑な思いと強がりで、心はぐちゃぐちゃになっている。
 そんな、はなちゃんに、なにかと声をかけるのは、活発なともちゃん。その近くには、いつも、親友のあいちゃんがいて、いっしょにはなちゃんを思いやる。そして、はなちゃんを、みんなの輪の中へ、さりげなく誘い入れるのだ。

 学校の友達関係が、こんな思いやりにあふれていたら、どんなに素敵だろう。実際の学校生活は、こんなではないかもしれない。私が子どものとき経験からいえば、仲良しの中でも、競争心や妬みがあって、意地悪や陰口が行われている。でも、子どもたちは、あいちゃん、ともちゃんのような思いやりにあふれたやさしい子でいたい、そういう友達がほしいと心から願っているはずだ。だから、共感できる子が登場する、このシリーズは、女の子たちの心をほっとやわらげ、癒やしてくれると思う。

  
 

 さて、このシリーズのもうひとつの大きな特色、魅力は、イラストレーターふるしょうようこさんの絵だ。やわらかな線とパステルカラーのやさしい色合い、現実にファンタジーを組み合わせて、心の機微を映し出す絵は、小学生女子の心をきゅんとさせるだろう。 悲しい気持ちを、ブルー系の模様の背景やデフォルメした涙で表したり(『ええところ (絵本単品)』)、陰で表したり(『へなちょこ』)、嬉しい気持ちのページでは、花が飛び出していたり。私が好きなのは、『』の縄と、ユーモラスな縄おばけだ。
 3作の表紙、裏表紙をくらべて見ると、また楽しい。表紙にはそれぞれの主人公の顔がある。かわいい丸い目のあいちゃん、きりっとつり目のともちゃん、さらっと切れ長の目のはなちゃん。それぞれが、そのイメージに合った花に囲まれている。そして、裏表紙では、『ええところ (絵本単品)』『へなちょこ』で、あいちゃん、ともちゃん二人の下校姿だったのが、『』では、本をもって帰るはなちゃんに、あいちゃん、ともちゃんが後から声をかけている。こうして、ひとりひとりの個性を尊重している感じが、とても気持ちいい。

 このシリーズ、この先も続いて、尊重しあえる仲間が、ひとりずつ増えていったら、楽しいと思う。

#ひとりでぼっち #NetGalleyJP
https://www.netgalley.jp/book/174839/review/592770

 NetGalleyのプレゼント企画で、『ひとりでぼっち』をプレゼントしていただきました。

  Img1190thumb1 

あいちゃん、ともちゃん、はなちゃんとの出会いを、

ありがとうございます。

 

 

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