課題図書を読む『そうだったのか! しゅんかん図鑑』
心にとめておきたい一瞬を人は写真に撮る。けれども、この写真図鑑はそうした写真ではない。人の目が捉えきれなかった一瞬を写真にして見せてくれている。
『そうだったのか! しゅんかん図鑑』
伊地知国夫写真
小学館
望遠鏡は人の視力のおよばない遙か遠くを見せる。顕微鏡は、人の目には見えないミクロの世界を見せる。同じように、ハイスピードのシャッターで撮った写真は、人間の目が決して捉えきれない、数千分の1秒という一瞬を捉えることができる。
紹介されているのは、われるシャボン玉、シャワーから流れる水、ろうそくの吹き消される火など、身近なものばかりだ。ページの折りたたみを使って、クイズ形式で楽しめるようになっている。
写真は一目瞭然。普段の何気なく見ていたものが、実はこんな動きをしていたと、驚きは大きい。だが、なぜ、そうなるのかの解説も、充実している。たとえば、水の入ったコップを勢いよく押して倒したとき、水は跳ね上がる。それは、「慣性の法則」が働いているからだと。
写真で子どもたちを驚かせ興味を引いて、好奇心をかきたて、解説で物理科学へ導いている。
面白いと思ったのは、シャワーやじょうろの水。実は水滴が連なっている。わたしたちは、イラストでシャワーやじょうろの水をかくとき、点々を描いたりする。目ではそう見えていないのに、なんとなく脳がそう理解していたのだろうか。
逆に脳がだまされているのが、せんこう花火。光の線は、実は存在していないらしい。
見えるから存在するとは限らないのだ。
読み手の科学的な知識や理解が足りないうちに、この本を読むと、ただ写真を面白がるだけで終わってしまう恐れがある。解説を理解できる年齢での再読を薦めたい。
*第65回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書。
« 課題図書を読む『スタンリーとちいさな火星人』 | トップページ | 南K小学校 朝の読み聞かせ 6年1組 「小石投げの名人」今年の夏では最後 »
「児童読みもの」カテゴリの記事
- 課題図書を読む『ねこと王さま』(2020.06.02)
- 課題図書を読む『ある晴れた夏の朝』(2019.07.09)
- 課題図書を読む『サイド・トラック 走るのニガテなぼくのランニング日記』(2019.06.29)
- 課題図書を読む『そうだったのか! しゅんかん図鑑』(2019.06.23)
- 課題図書を読む『クニマスは生きていた!』(2018.07.04)
« 課題図書を読む『スタンリーとちいさな火星人』 | トップページ | 南K小学校 朝の読み聞かせ 6年1組 「小石投げの名人」今年の夏では最後 »
コメント