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2019年6月21日 (金)

課題図書を読む『スタンリーとちいさな火星人』

 大人目線・親目線で読むと、微笑ましくて、ふふっと笑わずにいられない作品。主人公のスタンリーが抱きしめたくなるほどかわいい。


スタンリーとちいさな火星人
 サイモン・ジェームズ作
 千葉茂樹訳
 あすなろ書房

     

 母さんがとまりがけの仕事へ出る日、スタンリーは段ボールの宇宙船に乗り地球を離れた。帰ってきた宇宙船からでてきたのは、スタンリーそっくりの火星人。火星人はスタンリーの家で、父さんや兄さんと夜を過ごし、学校で友だちと喧嘩をする。でも、母さんが帰ってくると、火星人は……。

 スタンリーは、何歳だろう? 学校へいっていて、ちゃんと自分のことはできる。幼児からちょうど抜け出したばかりの年ごろだ。大きくなったのだから、母親がいなくても大丈夫。父親のいうことをきいて、いい子にすることだってできるはず。でも、やっぱりさみしくてたまらない。その寂しさ、寂しい思いをさせられる怒りなど、面白くない、もやもやした気持ちを、火星人になってわがままをいうことで、発散させようとしている。

 少し年上でもう母から自立している兄さんは、火星人になったスタンリーを多分面白がりながら、父親はため息つきながら、火星人になったスタンリーに調子を合わす。
 父親は、なに馬鹿なことしてるんだと、頭ごなしに叱らない。でも、火星人でも地球では寝る時間に寝なくちゃいけないなど、やるべきことだけきちっとやらせて、余裕を持って接する。その姿が、親として素晴らしいと思う。

 子どもの視線、スタンリーの立場からこの作品を読むとどうだろう?
 火星人になって、母親がいるときならちゃんとすること(手を洗うとか、歯を磨くとか)をしないでいる。それは、罪悪感をちょっぴり感じる、でもちょっとやってみたい、ドキドキする冒険だ。悪いことをしているのは、スタンリーではなく火星人だという、いいわけもある。子ども読者は自分もやってみたいなと思うかもしれない。
 でもやっぱり一番心配なのは、火星から帰ってきたスタンリーを母親がどう思うか? 子どもたちは、素敵なラストに胸がキュンとなるだろう。

 ラフな線と淡い色彩でせ描かれた絵は、体の動きも、表情も控えめ。目は点で、口の線だ。でも、そこから不思議と登場人物たちの心の動きが細やかに感じられる。派手な表情がないことで、かえって想像の余地が生まれ、物語に沿った感情を、読者自身の心で感じとれる。

 大人目線と子ども目線と、まったく違う読み方ができる作品だ。子どもたちの読書感想文、読んでみたいと思う。

*第65回青少年読書感想文全国コンクール 小学校低学年の部 課題図書。

 

 

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