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2017年7月

K図書館本館 ストーリーテリングによるおはなし会 小学生向けだげど

昨日に引き続いて、図書館でのストーリーテリングによるおはなし会。夏休みの小学生向けにもうけられた枠で、3日間、午前と午後にいろいろなお話会や人形劇が行われる。わたしたちストーリーテリングの会がトップランナーだ。

プログラム
 おばけ学校の三人の生徒 松岡享子作 *
 わらべうた いちじくにんじん *
 かえるの王さま グリムの昔話

 雨が降ったこともあって、いつもより子どもたちが多くて、子ども16名、大人8名だった。ただ、小学生向けだけれど小さな子が多い。小学生は4名ぐらいで、あとは2~5歳の子ばかり。絵本や紙芝居がないので、小さな子はわからないかもしれません、と一応はお伝えしたが、みなさん聞いてくださった。
「おばけ学校の三人の生徒」の始まりのところで、ひとりの子が大きな声をたててぐずり出し、心ここに非ずで語ってしまったために、なにか抜かしたかもしれない。でも、そのまま語り続けると、小さな子も含めて、こちらを見て静かに聞いてくれた。おばけたちがどんなふうにやるのか、興味をもっいてるようで、笑っている子もいる。ぐずっていた子もぽかんとて私の方を見ていた。はあ、まずまずと手遊びへ。小さな子が多いので昨日とは違うバージョンでやった。
 つぎの「かえるの王さま」は、ほとんどの子が聞けなかった。寝転んだり、おしゃべりしたり。でも、小学生の何人かとお母さんがよく聞いていて、語り手はその聞き手を頼りに、しっかり語った。素晴らしい。
 今週末は、普段の図書館のお話会で、小さな子向けのプログラムを用意している。なんとか、おはなしが面白いと思ってもらいたい。

K児童館 夏休みのストーリーテリングによるおはなし会 最多記録

 小学校の隣にあるこの児童館では、お弁当持ちで大勢の子が朝早くからやってきて、何人かが小学校のプールにもここから行ってここに帰ってくる。雷の予報がでている今日はプールが休みだったので、なんと65人もの子が集まった。この児童館では最多記録。図書室いっぱいに座っていて、圧倒されそうだ。

 プログラム
 はじまりのうた ろうそくぱっ
 おばけ学校の三人の生徒 松岡享子作 *
 わらべうた いちじくにんじん *
 かえるの王さま グリムの昔話
 おしまいのうた ろうそくぱっ

 わたしは「おばけ学校の三人の生徒」を語った。人数が多く、ちょっとざわついているので、音量をあげるのと子どもたちに届くようにと、いつもよりゆっくり目になった。低学年の子はとくに喜んだが、大きな子たちも結構楽しんでくれたように思う。1年生おばけは可愛らしくやって、特におもしろがってもらえた。3年生おばけは、やりすぎぐらいに大げさにやってみた。納得したり、笑ったり、まずまずの反応だ。最後の脅かすところは、あまりうまくいかなかった。でも、話し終わるとみんな大笑いしたので、まあまあのできだろうか。
 「かえるの王さま」は、かえるが食堂に入れてくれと押しかけてくるところから、真剣に聞く子が増えてきた。でも、長いお話だけに、ざわざわしだした子たちもいて、語り手が気にしてしまったようだ。一度お話が終結した(かえるが王子になる)あとの、ハインリヒのお話は、子どもたちはなかなかついていけないところなので、今日は語ったけれど、やめておいた方がよかったかもしれない。ここを語るか語らないか、判断が難しい。

 明日も図書館で同じプログラムで語る。今日とは全く違う雰囲気になるんだろうな。
 

S保育園 年少中長さん ストーリーテリングによるおはなし会 小さな子におすすめ「ねずみのおむこさん」

 毎月、会員のだれかが朝の時間に行って、ひとつだけお話をしているS保育園。今日は私の当番だった。語ったのは、「ねずみのおむこさん」。
 子どもたちの前で語るのは2回目。前回は静かに真面目に聞いてくれたが、いまひとつ反応がわからなかった。
 今回は「ねずみのおむこさん」といったところで「知っている?」との声。ほほぉ、ほんとかな?と思いつつ語り始めた。でも、「誰が世界一偉いのかなあ」というと「ねずみだよ」という声がして、ああ本当に知っている子がいると思った。
 それにしても年少さんまで実によく聞いている。
 雲さんより強いのは風さんというところでは、「風かあ」という声が上がった。そんな反応が返ってくるとは思わなかったので、びっくりして一瞬とまってしまった。でも、すぐ気を取り直して語る。そのあとも、興味深げに聞いてくれるので、最後まで気持ちよく語ることができた。終わると「ねずみのお嫁さんだね」という声。すごいほんとによく知っていると思った。
 あとで園長先生から、昨年、劇で年長さん(今は1年生)が「ねずみのお嫁さん」やったので、それを見た子どもたちは、とくに興味を持っただろうとのことだった。なるほど。
 今回でこのお話は、年少さんのような小さな子たちでも楽しめるお話だと分かった。小さな子たちに、どんどん話していきたい。


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  出典本

7月のおはなし広場 プールのあと

 おはなし広場は3限目。準備のために2限目の終わりごろ学校へ行くと1年生がプールに入っていた。着替えもあるし、少し遅れてくるかなと心配したが、ちゃんと時間通りに集まって並んでくれた。みんな髪の毛が濡れている。慌ててきたのかもしれない。

プログラム
 大型絵本 でんしゃにのって (うららちゃんののりものえほん) とよたかずひこ作 アリス館
 おはなし アリョーヌシカとイワーヌシカ ロシアの昔話 *
 絵本 にじ (かがくのとも絵本) さくらいじゅんじ文 いせひでこ絵 福音館書店
 紙芝居 ふくろうのそめものやさん (ともだちだいすき) 下田 昌克脚本 水谷章三画 童心社 *
 絵本 たいせつなこと (ほんやく絵本) マーガレット・ワイズ・ブラウン文  レナード・ワイスガード絵 うちだややこ訳 フレーベル館

でんしゃにのって (うららちゃんののりものえほん)』では子どもたちは大はしゃぎ。最後にここだ駅で「まもなくはっしゃします」とアナウンスがあるとき、うららちゃんがまだ電車から降りていないので、降りそびれるのではと心配する子がたくさんいた。こういう反応は、今まであまりなかったと思う。
 子どもたちがあまりはしゃいでいたので、お話をちゃんと聞けるだろうかと心配して「アリョーヌシカとイワーヌシカ」を語り始めた。最初のうちは「アリョーヌシカとイワーヌシカ」のふたりの名が両方とも「シカ」で終わるのを面白がったりしていたが、次第に静かに耳を傾ける子が多くなり、イワーヌシカがお姉さんの言うことをきかずに子ヤギになってしまったところでは、ほとんどの子が真剣にきいていた。10分かかるお話だが最後までよく聞けたと思う。
 でも、やはりプールのあと、子どもたちは次第に疲れた顔になってきた。そこで紙芝居『ふくろうのそめものやさん (ともだちだいすき)』の前で少し背伸びをしてもらう。フクロウがカラスにいろいろな色をいっぺんに書けたところで、「あーあ」という声。こういう由来話は、子どもたちは好きだ。
 最後の『たいせつなこと (ほんやく絵本)』は、疲れた心身には難しかったかもしれない。少し時間が余ったが、子どもたちがあまりぼーっとしていたので、おまけ話はやめておしまいに。プールの後のおはなしはちょっときつい。

  

課題図書を読む『耳の聞こえないメジャーリーガー ウィリアム・ホイ』

 絵本のタイトルのとおり、「耳の聞こえないメジャーリーガー、ウィリアム・ホイ」の伝記なのだが、この人は、1862年生まれ。南北戦争の時、生まれた人がプロ野球選手になっていたというアメリカのプロ野球の歴史に、まず、無知な私は驚いてしまった。ウィキベディアで調べると、1860年代初めにはプロ野球選手が存在していて、1868年に初めてプロだけのチームができたという。ラジオ放送もまだ行われていない頃のプロ野球とはどんなだろう? 人々は、じかに観戦するほかに、新聞などで勝敗や試合の状況を知ったのだろうか? 絵本とは全く関係ない素朴な疑問ですが……。。

耳の聞こえないメジャーリーガー ウィリアム・ホイ
 ナンシー・チャーニン文
 ジェズ・ツヤ絵
 斉藤洋訳
 光村教育図書

     

 ウィリアム・エルスワース・ホイは、耳が聞こえない障がいを持ちながら、1886年、野球選手になり、1888~1902年メジャーリーガーとして活躍した。彼は、ろう学校の野球チームに入りたくて練習に励み上達したが、身長が低いという理由でチームに入れなかった。卒業後、靴の修理店につとめていたとき、偶然ある野球チームの人に認められ入団のチャンスを得る。だが、耳が聞こえないからと給料を下げられたり、同僚から陰口を言われたりした。それでも、ウィリアムはチームをいくつも移り、がんばり続けた。
 ある日、3振したがストライクという審判の声が聞こえず、そのままバッターボッスに立ち続けて選手や観衆から嘲笑を受ける。この時代、審判は声だけで判定を表していたのだ。ここの出来事を機に、ウィリアムは審判のジェスチャーを審判に提案、さらにはチーム内のサインを考える。それが、今の審判のジェスチャーやチームのサインにつながる。その後、彼はメジャーリーグの選手となり活躍する。

 ウィリアムは、大好きな野球をたゆまず努力し続けて夢を達成した。しかも、たに障がいを乗り越えただけでない。障がいに関係なくプレイできるよう、野球のやり方を変えたのだ。さらにその新しいやり方は、他の選手や観衆にとってもよいものとなった。
 学校のチームに入れなかった時も、プロに入って障がいのために不公平な扱いを受けた時も、ウィリアムは前向きだった。つねに自分を卑下することなく、プライドを持っていたのだと思う。それは、お母さんが、ウィリアムの生まれた時からずっと、彼の成長をにこにこと笑って見守って、彼の自尊心を育ててきたからだろう。彼とお母さんとのつながりが、絵本ではさりげなく描かれていて、あたたかい気持ちにしてくれる。

 前向きな努力の素晴らしさを伝える一方で、この絵本はバリアフリーの素晴らしいお手本にもなっている。ウィリアムは、他の選手と同等にプレイする権利を堂々と主張し、審判やチームメイトはそれを真摯に聞き入れ、野球をさらに魅力あるスポーツにした。
 障がい者の困難を、他の人たちは気づけなかったり、理解できていなかったりする。分っていながら、多数派である自分たちのやり方を意固地に守りたがることもある。そうした障がい者とそうでないもののバリアをウィリアムは、野球への愛で取り払った。また、ウィリアムの提案を真摯にうけいれた当時の審判や選手たちも素晴らしい。
 すべての人を励ますバリアフリーな絵本。

*第63回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

G児童センター未満児さん おはなし会 いろいろな子がいる

 この児童センターは、4年前に改築されたとのことで、バリアフリー構造になっていて、とてもきれい。初めて入った私は、その心地よさに感激した。

プログラム
 わらべうた くまさんくまさん *
       おちゃをのみにきてください *
 絵本 なにたべてるの? いちかわけいこ文 たかはしかずえ絵 アリス館 
 絵本 ちゃぷちゃぷ ぷーん 得田之久文 及川賢治絵 こどものとも0.1.2. 201702号 福音館書店 
 わらべうた じーじーばー
       ももやももや
 紙芝居 はーくしょい (せなけいこのえ・ほ・ん)の紙芝居版 せなあいこ作 教育画劇
 絵本 たんたん ぼうや (0.1.2.えほん) やぎゅうげんいちろう作 福音館書店
 わらべうた さよならあんころもち

 大勢集まって親子15組17名の子。失敗したのは、幅広くすわってしまったこと。できるだけ中央に寄るようにお願いしたけれど、1度座ってしまうとなかなかつまない。
「くまさんくまさん」や「おちゃをのみにきてください」は、いつも図書館でやっているようにクマの人形を使い、ひとりひとりのところへ出かけていった。たいていの子は喜んでいたけれど、はずかりがやさんや怖がり屋さんは嫌がるので、あまり近寄らないようにする。
 絵本『ちゃぷちゃぷ ぷーん』では、「もういいかい?」と呼びかけると「まあだだよ」と答える子がいて読み手がとても嬉しそうだった。
 「じーじーばー」と「ももやももや」はハンカチを使った。子どもたちは立ち上がって喜ぶ子、とちゅうでやめちゃう子など、さまざま。人数が多いので、なかなかまとまらなくて、歩き回る子が出てしまった。
 でも、紙芝居の舞台を出すと、みんな珍しいのか、しんとして舞台を見いった。最後は「さよならあんころもち」で、いろいろなあんころ持ちをつくっておしまい。

 終わってからお茶をいただいていると、お母さん方が、にこやかに「ありがとうございました」と挨拶して下った。楽しく思ってくださいますように。

  ←読んだのは紙芝居版

 

J保育園 年長さん ストーリーテリングによるおはなし会 1回目 話の流れを理解する 

 今日は気温こそ30℃を超えたけれど、からっとして爽やかな晴天となった。J保育園は今年度はじめて園にいくと、外国籍の子が何人かいてお話が理解しにくく、動き回って、他の子も落ち着かないかもしれないと、先生が心配しておられた。さて、お話を始めてみると……

プログラム
 はじまりのうた ろうそくぱっ *
 おはなし ひなどりとネコ ミャンマーの昔話 *
 手遊び 木がのびる *
 おはなし ついでにペロリ デンマークの昔話
 おしまいのうた ろうそくぱっ

「ひなどりとネコ」は「ひなどり」が鳥の子どものことだと説明してから始める。語り初めはできるだけゆっくりと語った。半分くらいの子が、真剣な顔でじっと聞いてくれる。後半の壺にひな鳥たちが隠れるところでは、壺を手で形造ったり、ひなどりがくしゃみをするところで、いっしょにくしゃみのまねをする子がいた。ただ、お話の流れとして理解しているのは、やはり半分くらいだろうと思う。「ついでにペロリ」も、そんな感じがした。女の子を七人、ネコが呑み込むところで、「ええーっ七人もー、食べ過ぎ」といった反応を示した子がいて、何人かとそのことでおしゃべりを始めたが、その子はその場面を想像しているだけで、その前の積み重なりが理解できていないのではないかと思う。わかっていたら、次は何を呑み込むだろうと聞き耳を立てるはずだ(その子の内面はわからないのでただの予測だが)。語り終わると「ネコはどうなったの?」と聞く子がいた。この子はきっと話の流れを理解していてたと思う。
 次は9月にお話に行く。ううーん、どんなお話をしようか? 話をきちんとおっていけるお話がいいか、あるいは、言葉の音感やリズムの楽しいお話がいいか? 今から準備しておかなくては。

朝の読み聞かせ 4年1組 いろいろな「バナナです」

 台風あけの今日、雲っていたけれど、昨日までと比べたら、蒸し暑さが減って楽になった。さらに教室に入るとエアコンが入っていて、とても心地よくて、一日中いたいくらいだった。

プログラム
 絵本 バナナです 川端誠作 文化出版局
 おはなし カメの笛 ブラジルの昔話
 絵本 ジローとぼく 大島妙子作 偕成社  

 時間より前に入らせてもらえたので、予備に持っていった『バナナです』を読む。「バナナです」の連続に爆笑。でも、バナナが木になっている絵には、「ふーん、そうなんだ」の声。カバがバナナを食べるところでは「かばってバナナを食べるんだ」。終わると「もう終わり?」でも、しっかりこちら側に気持ちを惹きつけることができた。「カメの笛」は、途中まで真剣に聞いていた。カメがヒョウをだますところで、にやにやと笑う子もいた。最後のおちはよく分かったようで、何人の子が楽しそうに笑みを浮かべてくれた。最後は『ジローとぼく』。ジローが小犬から大きくなったところで「でっかい」と声が上がったが、あとは静かに聞いていた。時々こっそり子どもたちの顔を見るとにこにこしていてくれている。
バナナです』が一番楽しそうだったのが、ちょっと気がかりなのだけれど楽しんでくれたかなあ? 

     

7月のK図書館分館おはなし会 4匹の子ブタ

 今日から7月。今年ももう後半に入ったかと思う、時の流れの速さに驚いてしまう。今日は4人の子どもたちが来てくれた。一番大きな子は1年生。他の子は年中さんくらいかなあ。横一列に並んで、にこにこしていてくれる。

プログラム
 わらべうたであてっこ おてぶしてぶし *
 絵本 いしぶたくん (チューリップえほんシリーズ) あきやまただし作 すずき出版
 紙芝居 おかしだいすきくいしんぼ王さま (ゆかいな6人の王さまシリーズ) 飯島敏子脚本 相沢つる子絵 教育画劇
 手遊び ぶたがぶたれた *
 絵本 ちゅうちゅうたこかいな (講談社の幼児えほん) 新井洋行作 講談社 *
 絵本 おばけのたんけん (こどものとも絵本) 西平あかね作 福音館書店 *
 エプロンシアター 若返りの水

「おてぶしてぶし」では、手づくりのさくらんぼうを隠すのだが、そのさくらんぼがちょっと大きめなために、小学生のお兄ちゃんにはすぐにわかってしまい、他の子はお兄ちゃんを見て、真似するので、2回やって、2回とも当てられてしまった。でも、子どもたちは嬉しそうだった。
いしぶたくん (チューリップえほんシリーズ』は、意外に子どもたちは真面目な顔で見ている。お兄ちゃんだけがちよぴりくすくす笑っている。ブタのお話が続いたので手遊びは「ぶたがぶたれた」最後にゴツンと頭を拳でぶつのだが、4人いるので、4人分やった。4匹の子ブダだ。少人数おはなし会では、こんなことができるのがいい。
ちゅうちゅうたこかいな (講談社の幼児えほん) 』は、新く、たぶんあちこちのおはなし会で読まれている人気絵本。「ちゅーちゅーたこかいな」をふしを付けて歌いながら読むと、子どもたちもいっしょに歌い出し、次に出てくるのは何かと考えていた。すべて「な」で始まるのだが、そのあたりは年中さんたちにはまだわからないらしい。『おばけのたんけん (こどものとも絵本)』は、とても可愛らしいお話で、小さな子たちが共感できそうなので選んだ。絵が全体に暗く、登場するおばけたちも小さいが、少人数のおはなし会ならなんとかなると思ったのだ。子どもたちは静かに聞いていた。あとで、仲間に聞いてみると、「私の目ではあんまりはっきり見えなかった」「それより、よくあんな細かい字が読めるね」と、話が別の方に飛んでしまった。(読み聞かせをするものにとって、年とともに近くが見えなくなるのは、大問題です)
 エプロンシアターでは、4人の子は木になったり、エプロンに流れる水にさわったりと、楽しそう。おばあさんが赤ちゃんになってしまったのをけらけら笑って聞いていた。

   

課題図書を読む『霧のなかの白い犬』

 この作品は、昨年に1度読んだ。そのときは、あちこちに話が飛ぶ前半にほとほとに疲れ、謎が解き明かされる後半で一気に読み終えた、読み応えがあるというより、なぜこれほど複雑に書くのか?と疑問ばかりだった。けれど、再読の今回は、あちこち飛ぶ話題の意味がはじめからわかり、そのつながりも理解でき、メッセージがよりくっきりとした。小学生高学年の課題図書としては、難易度がかなり高い作品だ。

霧のなかの白い犬
 アン・ブース作
 杉田七重訳
 橋甲賢亀絵
 あかね書房

     

 イギリスが舞台。ジェシーの祖母は認知症を発症し入院する。だが、何かに脅えていてひどくとり乱し、飼うことにしていた白い子犬を、ジェシーといとこのフラン、友だちのケイトに世話を頼む。
 ケイトはジェシーの親友で、車いすに乗っている。だが、率直で活発。スポーツも万能でシッティング・バレーボールでは、パラリンピックの出場の可能性があるくらいだ。祖母はこのケイトのことを特に心配し、JMと書いた紙きれを、ジェシーやケイトにお守りにと渡したりする。
 いとこのフランは、両親が離婚して、ジェシーと同じ学校に転校してきた。以前は親切だったが、今は祖母に対してもケイトに対しても思いやりがない。弱いものいじめをする悪い友だちとつきあっていて、生活も荒れている。
 町には外国人労働者が増えていて、人々はあまりいい顔をしていなかった。ジェシーの父親も、外国人労働者が増えたせいで、事業が立ちいかなくなり、持ち家を売り払い、フランスに出稼ぎに行ったのだ。
 ある日、祖母の家に、ドイツから宛名違いの絵葉書が届く。また、祖母の家から、白い犬をつれた少女の写真がみつかる。絵葉書の真の宛先と写真の少女の正体を探っていくうちに、ジェシーは祖母の意外な過去を知る。それは、学校でちょうど学んでいた第2次世界大戦のいまわしい歴史とつながっていた。

 第2次世界大戦の体験を語れる人の数が減ってきた最近では、あの悲劇を繰り返さないために大戦のことを語り継ぐ作品が児童文学でも増えてきたように思う。この作品は、現代の社会問題を描きだして、今があの時代に似てきていないか? 人々の考え方はななにかに踊らされゆがめられていないかか? 何かを思い込まされていないか? 警鐘を鳴らしている。

 ナチスといえば、ユダヤ人の虐殺が第一に頭に浮かぶ。だが、障害者、高齢者も役に立たないものとして抹消されていた。退廃芸術として、ヒットラーの基準にそれた絵画が押収され、音楽が禁じられ、本が焼かれた。雑種犬は嫌われ、黒毛のシェパードのみを真のジャーマン・シェパードとして認められ、ユダヤ人の飼っているペットは殺処分された。

 なぜ、人々はナチスのいいなりになったのか? 信じられないと、今の私たちは思う。ジェシーたちが学校の授業で、ちょび髭のヒットラーの演説のフィルムを見て、「どうしてみんな、こんな人についていこうと思ったのか、わたしにはわけがわからない」と思い、彼の号令で行進する兵士たちの姿を滑稽に思ったように。
 なぜ、こんな理不尽なことが許されたか?の答えを、ジェシーの同級生ベンの祖母が、学校に招かれて授業で語る。ベンの祖母は、ユダヤ系ドイツ人で、強制収容所に入れられたが生き残りだった。彼女の話は子どもたちにショックを与えた。当時のドイツの学校の教科書にとんでもないことが書かれていて、子どもたちはそれを信じていたのだ。ナチスの考えにほんの少しでも反対する人たちは、残酷な仕打ちをされて、人々はナチスの言いなりになるしかなかった。社会はナチスにのみこまれ、人々はその流れにのってしまったのだ。

 現代はどうだろう。こうした負の歴史から学んでいするはずだし、人種差別は否定されているし、言論の自由もあるから大丈夫……本当にそうだろうか? 外国人に対する偏見はないのか? 外国人が起こした犯罪を私たちはどう感じるのか? ヘイトスピーチはなぜされるのか? 私たちはどう感じてるのか? どう考えるのか? その感情や考えはどこからくるのか? 私たちだって、いつ恐ろしい道に誘導されるかもしれないし、知らず知らずもう足を向けてしまっているかもしれない。

 ジェシーは体験を通して偏見に気づいていく。外国人労働者は、ジェシーにとって、父親の事業が失敗させた原因となった人たちでとても好きにはなれない。母や町の人たちも疎ましく思っている。ジェシーの叔母も病院で祖母が外国人より優先してみてもらえないのに憤っていた。新聞にも「不法就労移民」が国民のお金を奪っていると書いてあった。なにか事件が起これば、外国労働者がまず疑われる。でも、父親も出稼ぎ先のフランスでは外国人だ。
 いとこのフランの仲間たちは、おそらく深い考えもなく、障害者や外国人労働者など弱い立場を馬鹿にしてからかう。フランは、自分の考えは違っても、その仲間から外れたくなくて、なんとなく合わせざるをえない。そうした考えのない小さなことからなにが招かれるか、フランは身を持って知っていく。
 こうして作品は、ジェシーとフラン、障害者のケイト、さらにアフガニスタンから亡命してきたヤスミンを通して、読者に社会についての自分との関係を考えさせる。

 また、昔話が、世界を理解させてくれるものとして利用されているのも興味深い。グリム童話が出版される前に語り継がれいた「赤ずきん」、ぞっとするグリム童話の「盗賊の花嫁」が作中で紹介される。ジェシーが学校の宿題で書いた現代のおとぎ話では、子どもの時のおばあちゃんを主人公にして、ナチスに翻弄された当時をわかりやすく描きだしている。『昔話の魔力』の著者ブルーノ・ベッテルハイムの名も出てきて驚かされた。
 昔話がこの世を映しだしているのなら、私たちも日々暮らすことで、自身のお話を紡ぎ出しているともいえよう。そのお話が、どうか、どんな困難があってもハッピーエンドでありますように。

*第63回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の部 課題図書

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