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課題図書を読む『ぼくたちのリアル』

 第56回(2015年)講談社児童文学新人賞をとった作品。出版されて、2017年の児童文芸新人賞・産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞し、さらに課題図書に選ばれた。今を生きる作品です。

ぼくたちのリアル
 戸森しるこ作
 佐藤真紀子絵
 講談社

     

 ぼく、新学期、飛鳥井渡は5年生になって、はじめてリアル(璃在)と同じクラスになった。リアルとは家が隣同士だけれど、それほど仲がいいわけではない。というか、一緒のクラスになるのは浮かない気分。リアルがスポーツも勉強もなんでもできてカリスマ性がある人気者なのに、ぼくは地味でコンプレックスを感じるからだ。リアルは「アスカ」と、ぼくの幼稚園の時のあだ名を呼んで親しげにしてくる。転校生の美少年サジにも親切で優しい。先生には軽い友だちのような口調で話しかける。
 リアルを敬遠していたぼくだが、班がいっしょだし、分団がいっしょだし、なんだかんだと一緒に行動することが多くなる。リアルにたちまち魅了されたサジも、いつもふたりのそばにいた。
 7月になり、リアルが少しだけおかしい。そういえば毎年そうだった。それは、リアルが負っていた、ある過去の傷が関係していた。

 リアルが背負うものは、想像を超えるほど重い。その一方で物語は、クラス替え、学級委員決め、分団登校、合唱祭、林間学校といった、どこにでもある学校生活を丁寧に描いている。そのため、読者の子どもたちは、リアルの特異な過去も、自分たちのリアルな日常の延長としてリアリティを持って読むことができるだろう。

 リアルは、お調子者のように軽く振る舞いながら、実は、だれも傷つかないように考えて行動する。主人公のぼくはリアルのすごさに気づき感服する。私も、これほどまっすぐでいい子はそうそういないと不思議に思った。だが、リアルの苦しみを知った時、なぜリアルが人を傷つけるのをこれほど避けるのか分かった。リアルが罪悪感と寂しさを忘れるにはこうするしかなくて、精いっぱい気張っていたのだろう。リアルはわがままが言えないのだ。
 サジは、児童文学には新しいキャラクターだ。この作品では、転校生であることもあって、守ってあげたくなる存在だ。繊細な感性を持っていて、一見弱々しく見えるけれど、自分の気持ちに忠実に行動する。リアルと対象的かもしれない。
 主人公の渡は、リアルとサジに振り回されながらも、いつのまにか楽しい時を過ごしている。そして、幼馴染のリアルを遠ざけてきたのは、リアルが恰好よすぎるからはなくて、リアルに触れてはいけない秘密があって、それを知るのが怖かったからだと気付く。リアルの方も、気持ちに整理がついてなくて、口に出すことができなかっただろうし、渡がどこまで知っているかもわからなかった。
 渡とリアルは、互いを慮って遠ざかっていた。だがそこに一途なサジが加わることで、本当のことを話せるようになっていく。

 それにしても「ぼくたちのリアル」とは素晴らしいタイトルだ。璃在という名前のリアル、リアルに描かれている学校生活のリアル、璃在に隠されていたリアル。
 そして、私たちも自分のリアルを生きている。

*第63回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の部 課題図書

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