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課題図書を読む『チキン!』

 今年の課題図書、読みはじめました!! まずは、市立図書館の新刊コーナーに飾ってあったこの本から。図書館では、この時期、夏休みに備えて、課題図書をそろえているのですね。
 作者いとうみくさんの作品は昨年度も『二日月 (ホップステップキッズ!)』で課題図書に選ばれています。実はまだ読んでいなくて……近いうちに読みたいな。

チキン! (文研じゅべにーる)
 いとうみく作
 こがしわかおり絵
 文研出版

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 小学6年生の日色拓は、小さなときから気弱で、苦い経験を重ねるうち、争い事を避けるようになった。その拓のクラスに、とんでもない転校生がやってきた。真中凛。ほんの少しでも曲がったことをした人を見逃さない。真正面から注意して、反省を促す。それまでクラスの女子たちは、リーダー格の仙道さんを敵に回さないように気を使ってきたが、凛はその仙道さんをもぴしゃりと注意する。凛のせいでクラスにもめごとが起き、女子の中で凛は孤立していく。
 拓はできることなら関わりたくなかったが、席が凛の前で、仙道さんの隣。その上、家が拓の住むマンションの隣。その家は、家族のように親しくしている麻子さんというおばあさんがひとり暮らしをしていたのだが、なにかの事情で凛が、しばらくいっしょに暮らすことになったらしい。麻子さんに孫をよろしくと頼まれるし……拓はいくら自分は関係ないと思っても、凛の言動を見ないでいることはできない――。

 みんな無邪気に仲良しとはいかないのが、高学年のクラス。そんなクラスの様子が、数人の登場人物でリアルに描き出されている。クラスには、目に見えない力関係が存在する。といっても、男子と女子は違う。腕力がものをいう単純な男子と、仲良しグループがあって、そのなかでも悪口や陰口があり、ちょっとした関係で力関係がひっくりかえる複雑な女子。子どもたちはそれぞれ自分の位置を見極めて、その子なりに巧く立ち回ろうと努力する。つまり空気を読んで、振る舞う。
 そうして力関係が定まり、表面的に均整とれていたクラスに、爆弾を落として、揺るがしたのが真中凛だ。
 なにしろ、凛の正義感の強さ、とがった率直さは強烈だ。転校初日、音楽室でバッハの肖像画を見て、髪の毛がマジキモーイといった子を、「相手(肖像画)がいいかえせないのに悪口いうのは許せない、謝れ」と咎める。読んでいて、さすがに、ついていけない気がした。凛は空気を読めないわけでない、読んでいても無視。なにより自分の正義感を優先して、名前通り、不正をみつけたせ真ん中に突撃していく。
 拓は、クラスから一歩離れて、トラブルにまきこまれないよう外から見ている。心やさしくて、自身も他人も傷つくが耐えられない。空気を読めば、悩んで傷つきそうだから読まない。なにより平和であることを優先する。
 自分のカプセルの中でゆったりと暮らしていた拓が、凛のせいで、さまざまなトラブルに見舞われる。凛の融通のきかない正義感を、まちがってないけれど正直うざいと思い、女子の権力闘争に巻き込まれ、女子の怖さを思い知り、毎日散々だと嘆く。このあたりの拓の不満と狼狽ぶりは、とても共感できる。だか、ユーモラスに描かれていて、拓には悪いけれど笑ってしまった。
 読み進めるうち、凛の行き過ぎた正義感や鋭どすぎる言動にわけがあること、その言動が人を傷つけるだけでなく彼女自身も傷ついていることがわかってくる。凛は、正しければ、何をどう言ってもいいわけではないことに気づいてもいく。
 凛も、拓も、クラスの子たちも、それぞれが、自分と違う価値観に感化され、変わっていくのだ。

 さて、読み手の子どもたちはかならず、登場人物の誰かに、自分や友だちをみいだせるだろう。私も元女子だから分かる。女子なら、リーダーの仙道さん、金魚のふんの久田さん、おとなしい藤谷になった覚えがあるはずだ。凛になった覚えがある子もいるたろう。男子は、ボスの嵐君と情報通なのを自慢な本馬君と拓と、シンプルに書きわけられているが、嵐君も本間君も憎めない。とくに後半は、ふたりともいい奴感があふれてくる。これは、主人公の拓がクラスの部外者から少しずつ中に入っていった証拠なのかもしれない。
 学校は小さな社会。クラスの人間関係は煩わしいけれど、その中でもまれるのはとてもいい社会勉強だ。この作品では、拓と凛だけでなく、すべての登場人物が、明るい方向へむかって終わっていて、読後感がとてもいい。

*第63回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

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