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課題図書を読む『さかさ町』

 ルイス・スロボドキンが挿し絵をつけている本。彼は、1975年にすでに亡くなっているけれど、その作品は、今もなお、読み継がれるばかりか、新たに邦訳され続けている。ユーモラスな動きのある線が私は好き。そのルイス・スロボドキンの作品が課題図書というのは、とても嬉しい。

さかさ町
 F.エマーソン・アンドリュース文
 ルイス・スロボドキン絵
 小宮 由訳
 岩波書店

     

 リッキーとアンの兄妹は、おじいちゃんの家に行くのに汽車に乗っていた。でも、行く先途中の線路の橋が壊れたために、橋が直るまで、「さかさ町」で待つことになった。
「さかさ町」は名前の通り、さかさまのルールがある、奇妙な町だった。看板は上下さかさまになっているし、自動車は後ろ向きに走り、家は、屋根と天井がさかさまになって建っている。
 リッキーとアンが泊まったホテルも、外から見ると2階建てだけれど、客室は地下にある。ベッドは、頭の方側の掛布団がマットレスのしたに入れこんであって、足の方側から入るようになっている。ホテルで働いているのは子どもで、年をとったら遊んでいていい。
 再び汽車が動き出すまでのあいだ、リッキーとアンは、レストラン、病院、野球、小学校、ショッピングセンターを巡り、さかさまの世界を満喫する。

 なんとも楽しいお話だ。さかさまだと、不便だったり不都合があったりするのじゃないかと思うのだが、むしろその逆。たとえば、上下さかさまの家では、屋根が平らだから、屋根にヘリコプターがとまれるし、地下にある客室は、高層階の部屋より涼しくて、安全で静かなのだ。
 さかさまのルールでは、価値観がひっくり返る。すると、前より素敵なルールになったりするから、不思議で面白い。病院や、アンストアーと呼ばれるショッピングセンターでの、私たちの世界とは、まるきりさかさまの支払いシステムは、なるほど、理にかなっている。このルールなら、健康保険も失業保険もいらなくて、弱者にやさしい、平等な社会ができそうだと、膝を打って感心した。

 このお話は、一見、ユーモアたっぷりの、でたらめなうそっこ話のようだが、実はとても奥行きが深い。ものごとをまったく逆から見ると、まったく違うものが見えてきて、常識がひっくりかえったり、新しい発想が生まれたりする。その意外性や発想の広がりがとても楽しくて心地よい。この本は、常識の域内だけにとどまっている私たちに、一歩外へでて、多角的な見方と柔らかな考え方をするようにと促してくれるのだ。

 ただ、翻訳本のため、日本の子どもたちには、レストランの料理や指ぬきなど、生活でのなじみがあまりなくて、ぴんとこない部分があるかもしれない。でも、それは、ほんの一部。中学年以上の子なら、十分にこの発想の転換を楽しめると思う。さらに、読後に、さかさまに考えるゲームなどしたら、もっと楽しいだろう。

*第62回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

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