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課題図書を読む『ワンダー』

 今年も課題図書を読む季節がやってきた。今年は出足が遅れちゃった(^_^.) 7月に入ると、公立図書館では借りにくくなるから、がんばらないと……さて、どこまでいけるかなあ。

 昨年、話題になってきになってはいたけれど、読むのを避けていた本。なぜなら、「生まれつき顔に障害がある」男の子の物語……読むのがとんでもなくしんどそうだと思ったから。でも、課題図書……読んでみれば、少しも重苦しくない。一気に読んだ。

ワンダー Wonder

 R・J・パラシオ作
 中井はるの訳
 ほるぷ出版

     

 主人公は、先に書いた通り、生まれつき顔に障害がある11歳の男の子、オーガスト。その障害の程度は、おそろしくひどい。口唇口蓋裂もあるけれど、それひとつじゃない。目も、鼻も、耳も、顔のすべてがくずれている。彼の顔を初めて見る人は、一瞬息をのんで顔をそむける。
 オーガストは、生まれた時から何度も手術を受けて、入退院を繰り返した。そのせいもあって、10歳まで、学校へは行かずに家で母親から教育を受けてきた。けれど、新年度から、学校へいくことになる。両親は、オーガストの将来を考えて、悩んだ末に決めたのだ。

 作品では、その後の、5年生の終了式までの1年間の出来事が語られていく。その形式が少し変わっている。作家の目を通してでもなく、主人公の目を通してでもない。何人かの登場人物の目を通して、リレー形式で、独白のように語られていくのだ。まずは主人公のオーガスト。次が姉のオリヴィア。その次が学校で最初からオーガストを受け入れる同学年の女子サマー。それから、オーガストに学校の案内をする役に選ばれたジャック、オリヴィアのボーイフレンドのジャスティンと続き、再びオーガスト。そして姉オリヴィアの幼ななじみミランダのあと、最後にオーガスト。
 それぞれが、前の人が語った出来事を重複して語りつつ、少しずつ話を先へ進めていく。こうして、オーガストという稀有な存在からひろがっていく波紋とそのなりゆきを、読者は様々な立場から見ていくことができる。
 ひとりひとりの独白は、自分の気持ちをありのままに表していて、とてもリアリティがある。自分がその立場にいたら、きっとそう感じたに違いないと思えて、素直に共感する。つまり、語り手はみな、どこにでもいる普通の子たちなのだ。その普通の子のなかに、「4百万人に一人」の確立で生まれた、奇異な顔をもつオーガストも、いつのまにか、ふくまれている。
 人は、見えるところだけでは測れない。見えないところに本質が隠れている。オーガストの同級生のジャックとサマーはいう。「オーガストはおもしろい」、「なかなかイケてる性格」。見た目をはずしたとき、オーガストは機知にとんだ普通の少年だと、同級生たちも私たち読者も、少しずつ理解していくのだ。
 もちろん彼らの1年間には、オーガストの顔のせいで、心がゆれ動くことがたくさん起きる。けれど、本質のところでは、あるひとりの5年生とそのまわりの人たちに起きることちっとも変わらないともいえる。ドキドキする新学期、勉強、発表会、楽しい行事、友情、親子のかかわり、恋、誤解、すれ違い、裏切り、はずし、いじめ、派閥、ケンカ、仲直り、仲間意識……。オーガストに触ったら「ペスト菌」がうつるという残酷な遊びですら、私は実際に、障害のない子たちだけの学校にあったのを知っている。この作品は、表面的には奇異な、特別なことを表しながら、実は、普遍的なことを描いていたのだ。
 読者は、作中に自分と似た思いや、心惹かれる人を必ずみつけるだろう。私は特に、姉のオリヴィアと同級生ジャックが心に留まった。誰よりも守ってあげたい弟を持つ姉の複雑な思い。とりたてて秀でたところはないけれど、気やさしくてまっすくで、だからこそ友として苦しみ、産みだした勇気。
 語り手ではないが、いじわるな同級生のジュリアンも、私は心に残った。ああした親がいて、その家庭環境で育てられたら、彼がああいう態度をとるのもうなずける。
 そして、その正反対に、オーガストが顔以外は普通の、素直な、おもしろい少年に育ったのは、だれもがくつろげるあたたかい家庭環境にあった。このことを最後につけくわえておきたい。

*第62回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の部 課題図書

  小学校高学年より中高生向きでもいいと思うけど……(o^-^o)

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