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課題図書を読む『ただいま!マラング村 タンザニアの男の子のお話』

 今年はアフリカを舞台にした課題図書がなんと3冊も。アフリカに高い関心が集まっているのを感じます。

ただいま! マラング村: タンザニアの男の子のお話 (児童書)
 ハンナ・ショット作
 佐々木田鶴子訳
 齊藤木綿子絵
 徳間書店

     

 表紙には、かわいらしい男の子と犬。男の子はのんびりしたユーモラスな表情なので、タンザニアの村でののどかな暮らしといった、『アンナ・ハイビスカスのお話  アンナのうちはいつもにぎやか 』のようなお話を予想した。ところが、読みはじめると、まったくシビアなおはなしで驚いた。

 タンザニアのマラング村で生まれたツソは、父親が亡くなり、その後母親がいなくなり、しんせきのおばさんの家に、おにいちゃんとひきとられた。貧しくて、ただでさえ子だくさんのおばさん一家にとっては、兄弟はお荷物で、おばさんたちは冷たく当たり、ろくに食べさせてもらえない。
 とうとう、ある夜、おにいちゃんはツソをつれて家を抜け出す。ふたりは、夜通し歩いて、モシの町へ行き、売っている食べ物をくすねておなかを満たす。次の日の朝、さらに大きな町へいくバスに乗るはずだったが、おにいちゃんとはぐれてしまう。
 おにいちゃんは、もうバスに乗ったのかもしれない。次の日ツソは、お兄ちゃんを追って、ひとりでバスにのり……。

 ツソはまだ4歳。4歳というと年中さん。そんな小さな子がひとりバスで旅立ち、やがては路上生活をする子どものひとりとなる。食べるためには食べ逃げもするし、ワンツグと呼ばれる白い肌の人たちに恵みをこうたりもする。
 恵まれない境遇に涙しそうだが、主人公ツソの視線で描かれたこの物語は、からっとしている。明るくあたたかい雰囲気のイラストの力もあるだろう。だが、なんといっても、不安や心細さはあっても、ツソが好奇心と感受性に満ち、新しい世界や出来事を、無邪気に受け止め、その場その場で生きるための行動を直観的にとっているからだろう。
 たとえば、満員のバス。乗る直前になって切符がいると知り、お金のないツソは、ちかくにいた知らないおばさんの手のひらに、手をさしこむと、おばさんが握ってくれ、そのままおばさんの子として無料で乗り込んでしまう。
 また、初めて見る大型食料品店で、豊かな商品に驚き、カートを押してたくさん買い込む女の人を見て、この人にはいったい何人子どもがいるのか?と考えたりする。さらに、閉店後も隠れてちゃっかりその店に残り、天国にいるような夜を過ごす。
 ストリート・チルドレンになってからは、生きるために食べ物を盗むが、仲間とのルールをしっかり守る。

 この作品は、物語の形をとっているけれど実話とのこと。巻末には16歳になったツソが写真いりで紹介されていて、現実感を感じる。ツソは運よく路上生活から救い出されるが、世界にストリート・チルドレンはたくさんいることを、訳者はあとがきでしっかり伝えている。
 自分たちの知らない場所に、自分たちと全く違う社会があって、たくましく生きている子どもたちがいることを、子ども目線で生き生きと伝えてくれる本。多くの読者の心に残ると思う。

*第60回青少年読書感想文全国コンクール 小学校中学年の部 課題図書

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