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2013年8月27日 (火)

『語りつぐ者』歴史を物語に紡ぐ

 アメリカの独立戦争。アメリカに移住した人々が一団となって、イギリスと戦って独立したのではなかったのですね。この作品を読んで初めて知りました。(ああ、本当にわたしは何も知らない)

語りつぐ者
 パトリシア・ライリー・ギフ作
 もりうち すみこ訳
  さ・え・ら書房

     

 エリザベスは、父親が留守のあいだ、リビーおばさんの家にあずけられることになった。リビーおばさんは、亡くなった母さんの姉だ。おばさんの家の玄関ホールの壁には、しみや手垢がついた、古い、少女のデッサンが額縁に入っていた。決して美しいとはいえない、その少女は、エリザベスにそっくり。この少女はズィーといい、独立戦争のとき、両親をなくしたのだと、おばさんは話してくれる。
 エリザベスは、一気にズィーに惹きつけられる。悲しげな目をしたズィー。彼女に、いったい、どんな物語があったのだろうか。

 
 物語は、エリザベスとリビーおばさんが暮らす現代と、ズィーが生きた200年前が、交互に表わされる形で進んでいく。
 ズィーの物語は、おそらく、エリザベスが絵と歴史的事実をつなぎ合わせて想像した、という設定だろう。エリザベスは、自分とうりふたつのズィーを見て、ズィーに同化する。そして、不器用だけれど、想像力にあふれ、おはなしを作る天性を持っているという、自分の性質を、ズィーに持たせて、ズィーの物語をつむぎだしたのだ。つまり、ズィーはエリザベス本人だ。ズィーの絵を通して、エリザベスは200年前にいき、ズィーとして独立戦争を体験する。そして物語を読む私たちはもまた、エリザベスを通して、ズィーと同化し、ズィーの物語を自分にひきよせて読むことができる。

 穏やかな暮らしから一転、ズィーは、独立戦争に巻き込まれ、悲惨な状況に追い込まれながらも、家族の絆をつなぎつづける。不安と恐怖の日々。しかし強い意思を持って立ち向かっていく彼女に感動した。

 互いに開拓地に移住し力を合わせて暮らしてきた人々が、王党派と独立派に別れて戦い、血を流したアメリカの独立戦争。そこには様々な人間模様があっただろう。その時代の人々はこの世になく、彼らが生きた痕跡が断片的に残っている。それをこうして物語につむぐことで、はじめて、歴史はただの無機的な事実ではなく、生きたものとして後世に伝えられるのだと思う。

 作者のパトリシア・ライリー・ギフは『ノリー・ライアンの歌 』でも、アイルランド人のアメリカ移住の歴史を、物語につむいで教えてくれた。こちらも、おすすめです。

*第60回青少年読書感想文全国コンクール 中学校の部 課題図書(2014.06追記

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