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2013年7月20日 (土)

課題図書を読む『ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂』

 今日から夏休み。7月前半の超猛暑が収まって、なんだか、秋が来たみたいな気がするんだけれど、夏はこれからだよね。

 さて、夏休みに入って課題図書をもう図書館から借りるのは申し訳ないので、紹介は今日でしばらくお休みです。

ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂
 マーギー・プロイス作
 金原瑞人訳
 集英社

     

 ジョン万次郎といえば、「知っている!知っている! 江戸時代、漁に出て難破し、アメリカ人にわたって、戻ってきてから開国のとき、その知識を役だてた人」。恥ずかしながら、この本を読むまで私は、そんな大雑把なことしか知らなかった。でも、とても不思議に思っていた。貧しいただの漁師の男の子が、どうして、アメリカ人に助けられただけで、そんなに立派になれたのか? でも、いまは、その理由がすっかりわかっている。
 万次郎が持っている好奇心、勇気、利発さ、創造力、柔軟さ、楽天性、夢想癖が並外れていたのだ。そして、ものすごい運が強さ。まずは、難破船から島に漂流できたこと。アメリカ船に助けられたこと。その船長がすばらしい人格者で、万次郎を気に入ってくれたことなどなど……。

 作品が取り上げているのは、14歳で難破してから家に帰るまでの11年と半年。その間に彼は、はじめてアメリカ人に出会い、捕鯨を経験し、アメリカで暮らす。さらに、再び捕鯨船に乗り……と、とんでもなく波瀾万丈だ。その中でも要となるエピソードを万次郎の視線でみずみずしく語り、その時々の万次郎の気持ちを巧みにすくいとり、丁寧に描き出していく。
 たとえば、助けてもらった船の捕鯨を初めて見たときのこと。船から小舟がおろされ、小舟でクジラを追っていく。そして小舟がクジラに十分近づくと、一人の頑強な銛打ちが綱のついた銛を、クジラに向かって投げる。

「一瞬、万次郎は手をのばして、つなをひきもどせたらと思った。クジラも気高かったのだ。美しく黒光りしている! こんなに大きく美しいものの命をうばっていいのだろうか!」(P58-59より引用)

 仏教徒の万次郎は、アメリカ人の恐れ知らずの捕鯨を、ダイナミックさにひかれつつも、残酷さに恐れを感じる。そして、「みんで経を唱えて、この殺生の許しを乞い、命をちょうだいしたクジラに感謝するべきだ」(P61より引用)と、心の中で非難する。こうした凄まじい異文化の体験を万次郎は繰り返し(日本の捕鯨が非難される現在と、まったく逆なのが興味深いが……)、おさえきれない好奇心、日本人の感覚など、さまざまな思いで、複雑に揺れる心の動きがあざやかに表わされていくのだ。

 300余ページの作品だが、おもしろくてあっという間に読めてしまう。ところどころに挟まれている絵(万次郎が描いたもののほか、確認できなかったが、『漂巽記畧』(土佐藩家臣が万次郎の聞き取りで書いたもの)だろうか)も、興味深い。いろいろな観点から読めるし、読書感想文も書きやすそうだ。きっちり書かれた巻末の参考文献も、いくつかは邦訳で読めるから、世界をもっと広げることもできる。お薦めだ。

*第59回青少年読書感想文全国コンクール 高校生の部 課題図書

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