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2012年4月 6日 (金)

『ジェンナ 奇跡を生きる少女』 ほんとうのわたしって?

 昨日、今日の朝日新聞に「母の娘」という特集記事がでていまたが、ちょうど読んだ本とシンクロしていて、驚きました。

ジェンナ 奇跡を生きる少女 (SUPER!YA)

 メアリ・E・ピアソン作
 
 三辺律子訳
 小学館
 

       

 17歳のジェンナは、事故の1年半後に意識を取り戻した。だが、自分の名前も、家族も、事故のことも、なにも思い出せない。母親は、過去の生活を説明し、なんとか思い出させようとする。一方で、祖母のリリーは、ジェンナによそよそしい。父親は、仕事があるのでボストンにいる。家族は、もとはボストンに暮らしていたが、ジェンナの静養のために、カルフォルニア州の引っ越してきたのだ。母親はそのために仕事をやめたらしい。だが、ジェンナの静養のためとはいえ、父親と母親の仕事から遠く、医者からも離れたこの地に引っ越してきたのはなぜたろう。

 時代設定は未来。何年後かはっきりと書かれていないが、地球最後の野生のシロクマが死んでいる時代だ。科学は進歩している。しかし、抗生物質の乱用が、強力な細菌株を生み出し、世界の4分の1の人口をなくしている。遺伝子組み換え作物が、元来の種と交配を繰り返すことで、突発的になにが起こるかわからないと危機を感じる人がいる。医療の進歩はクローンを超えている。

 ジェンナは、やがて、学校へいき、クラスメートと出会い、恋を知る。その間に、母親から渡された自分を記録したディスクの映像を見る。記憶は、断片的に、そして無秩序によみがえる。自分への謎が膨らみ、次第に明らかになっていく。

 訳者はあとがきで、この作品について、「ミステリーであり、SFであり、思春期の少年少女の心の動きを描くYA小説であり、親子の葛藤をテーマにした家族小説であり、切ない恋愛小説であり、この物語は多彩な顔を持っている。」と書いている。

 本当に、一つの物語にたくさんの要素が自然に組みこまれている。そのなかで、わたしが特に惹きつけられて読んだのは、親子の葛藤だ。ジェンナは、つねに、「わたしはなに? 本当の自分はなに?」と自問し、親の「保護」――または保護という名にくるまれた「干渉」に反抗しようとする。未読の方から物語の楽しみを奪ってしまうので詳しく書けないが、ジェンナのおかれた非常に特殊な状況が、親子の問題をくっきりとうきあがらせている。子どもを縛る親の愛、子どもにかかる重圧と、そこから逃げようとする子どもの苦悩。これは、親子の普遍的な問題であり、親子は、これを乗り越えられないと、互いに依存しあって自立できない。そして、わたし自身、母との関係、子どもとの関係で、いまだに現在進行形だと思う。多くの読者が、まったくかけ離れた存在であるジェンナの気持ちを、痛いほど理解できるだろう。

 ひとことも読みこぼせない文章に、興味をかきたてられて読みながら、考えさせられている。本当のわたしってなに? 生きるとは?

 

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コメント

はじめまして
新聞記事から検索して参りました

谷川俊太郎さんの「わたし」と並んで、この本が紹介されていたのですが
この本は児童文学の域を超えているような・・・

よかったら谷川俊太郎「わたし」も読んでみてください!(^^)!

ysgr さん

はじめまして。
そうですね。「ジェンナ」は、ヤングアダルト~大人向けのおはなしでしょうか。

『わたし』は長新太さん絵の福音館書店の絵本ですよね?
この本は、子どもたちがとても喜びますね。社会生活での、自分の位置を再確認するのでしょうか? わたしを知るという意味で「ジェンナ」とつながるかもしれませんね。

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