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『太陽が見える』グルジアのあたたかさに包まれた本

  1991年出版と、古いけれど、とても、あたたかい本。会話が多く、その言葉に引き込まれ、あっというまに読んだ。でも、紹介するのはむずかしい!! 『第八森の子どもたち (福音館文庫 物語) 』に匹敵するおもしろさ。是非、読んでみて。

太陽が見える

 ノダール・ドゥムバーゼ作
 喜田美樹訳
 佑学社
 

 

グルジアの村で、ソソイヤ少年は教師をしているおばさんと暮らしている。
 1941年、ソソイヤが12歳のとき、ドイツがソ連に宣戦し、村の若い男たち――息子であり、夫であり、恋人である男たちは出征した。残された者たちは、コルホーズ(集団農場)で働き、ささえあって暮らしをたてる。

 物語は、戦争開始から1945年の終戦まで。村の出来事、暮らし、人々の会話をソソイヤ少年の目を通して描く。村人たちは素朴で、人情味にあふれ、言いたいことを言い合う。「ええい。このクソジジイ! どうしてそう不吉なことばかりいうんだい!」「女のくせになにをがなりたてるんだ」(p49)といった具合だ。
 食べ物が不足し、戦死の知らせが届き、悲しい別れ、運命がある。それなのに、人々はユーモアをわすれず、全体にゆったりとした空気が漂っている。この共同体では、いさかいがあっても、たがいを知り、ゆるしあい、苦しいことはそのままに受け入れて、ともに忍ぶ。
 郵便配達人が、「戦争勃発も訃報も、自分が村に運んでくるから、戦争を起こしたのは自分だ、もう配達人はしたくない」と郵便物を投げ出したときも、また、ソソイヤがある理由のために、村中のヤギの乳をしぼって盗んだときも、村人たちは、苦しみや思いをともにわかちあう行動をとるのだ。子どものとき木から落ちて以来、少々精神障害のあるベジャーナも、人々から愛され、話の輪のなかにいる。彼の頓珍漢な話は、半分的を得ていて、深刻な話をまぜかえし、人々の心をなごませる。
 この作品の底には、強い人間肯定がある。水車小屋番のベグラールは、どんなことがあってもずるをしないし、村人たちは、病人や困っている人、弱い人には、だまって手を差しのべるのだ。
 タイトルの「太陽が見える」は、ソソイヤの幼馴染で盲目の少女ハチヤの言葉だ。彼女は、「太陽が見えれば、視力は取り戻せる」と医師にいわれていて、太陽が見えることに希望の光をつなぎ、いまを朗らかに暮らしている。どんな苦しみの中にあっても、かすかな光をみつけて一日一日を生きていく。ささやかな暮らしの素晴らしさが、ここにある。

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