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2011年10月21日 (金)

苦くて甘いきょうだいげんか『ぺろぺろキャンディー』

ぺろぺろキャンディー

     

 ルクサナ・カーン文
 ソフィー・ブラッコール絵
 もりうちすみこ訳
 さ・え・ら書房

 きょうだいの間では、いろいろ揉め事が起こるもの。上の子は下の子より大きいという理由で、どうしても、がまんさせられがちだ。そうしたときの不条理な思いに、子どもたちがずんと共感できる作品。

「わたし」ははじめて、友達のお誕生日会に誘われた。すると、妹のサナも行きたいといいだした。お母さんも妹をつれて行きなさいといい、とうとう、つれていくことに。お誕生会に妹をつれていったのはわたしだけ。妹は何でもいちばんでないと気がすまないから、ゲームで負けると大声で泣いた。帰りに、サリーのお母さんはお土産の袋をに持たせてくれた。袋のなかは小さなおもちゃやお菓子、赤いぺろぺろキャンディ。妹はすぐキャンディーをなめ、おもちゃもこわしちゃったけれど、わたしは大事にとっておいた。ぺろぺろキャンディーは冷蔵庫に。ところが、妹がそれを半分以上なめてしまう。わたしは妹を追いかけ、妹は逃げまわり、終いにお母さんの後に隠れた。「いもうとにわけてあげるくらいできない?」と、わたしはお母さんに叱られる。そのうえ、それ以来、わたしは誰からもお誕生日会に呼ばれなくなってしまった。

 「わたし」は、なんてひどい目にあっているだろう。妹も、お母さんも、ひどすぎる!! ここまで読むと、あまりにかわいそうで、泣きたくなった。でもそのあと、悔しさや悲しさをたっぷり味わったことから生まれた、意外な展開があり、満足感に満たされた。思わずにっこり笑えるラストが嬉しい。

 絵の中でお母さんは、パキスタンの民族衣装シャルワールカミーズにショールを身につけている。作者のルクサナ・カーンはパキスタン出身で3歳のときカナダに移住。このお話は彼女の体験を元に描かれたという。
 移民の家族は、移住先の文化・風習がわからず、戸惑い、失敗もする。「わたし」のお母さんは、「誕生日会」がなんだかよくわからず、そこには招待された子だけが出席し、妹や弟は誰もつれていかないということを知らない。「わたし」は、新しい土地の友達の常識と、祖国の常識の板ばさみになる。引っ越したとき、たいてい、子どもの方が早く、新しい土地に慣れるものだ。この絵本には、きょうだい関係の悩みだけでなく、移民の子の苦労が描かれているのだと、ネットで書評を読んではじめてわかった。日本でも移民家族は増えているが、まだまだ少数で、日本の子には、移民としての悩みを感じることはできないだろう。翻訳絵本は、文化のハードルがときどき、ついてくる。
 しかし、子どもたちは、もっと普遍的に、親の常識と子どもの常識の板ばさみいう形で読み換えてしまうだろう。親が子ども社会を理解していないばかりに、子どもに恥ずかしい思いをさせてしまうことはよくあること。わたしなら、お誕生日に妹をつれていきなさい!といいつけそうだ。

 墨と水彩による少しくすんだ淡い色使いの絵が、清楚で新鮮に感じられる。人物の表情がとても豊かだ。目が生きている顔の表情だけでなく、体全体で気持ちを表している。お母さんに叱られてふくれっつらをする「わたし」の背中、お母さんの後ろから少しだけ顔を覗かせる妹など、情況と感情がまっすぐ伝わってくる。背景や小道具を最小限にとどめ、人物に焦点をあていることも、読み手を主人公の気持ちに集中させる効果を出しているかもしれない。

 画家のブラッコールは、たくさんの絵本、児童書に挿絵を描いているが、日本では今のところ、『ねえ。おきてる?』(もとしたいづみ訳 光村教育図書)が紹介されているのみ。紹介されてこなかったのは、もしかしたら、人物の顔が日本人好みではないからかもしれない。お母さんの顔など、はじめ見た時は、知的すぎて、どきっとした。でも見れば見るほど、内面が隠されているようで、味わいがでてくる。注目したいイラストレーターだ。

2011年 ゴールデン・カイト賞受賞
2011年 シャーロット・ゾロトウ賞受賞

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