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2011年7月12日 (火)

課題図書を読む(2011)『聖夜』

 ううーん、うまくまとめられませんでした。ごめんなさい。

 青少年読書感想文全国コンクール中学校の課題図書。

聖夜 ― School and Music
 佐藤多佳子作
 文藝春秋

     

 俺、鳴海一哉はキリスト教系学校高等部3年生。父親は牧師で、母親は元ピアニストだ。しかし俺は、キリスト教を信仰していない。にもかかわらず、学校では聖書研究会に所属している。それから、オルガン部では部長をしていて、学校の礼拝のときに演奏する。ピアノとオルガンは幼いときから母親から教わっていた。その母親は、俺が10歳のとき、家を出ていった。鍵盤に向かうたび、心は揺れるし、宗教について考えるたび、イラつく。それでも、俺は、オルガンを弾き、聖書について考えて、わざわざ、心に波風をたてるのだ。
 オルガン部でコンサートを開くことになり、俺はオリヴィエ・メシアンの『主の降誕』を選ぶ。それは、かつて母が弾いていた、強烈すぎる印象を持つ曲。技術的にも難しいが、それ以上に俺の心の傷をかきまわし、気持ちを不安定にさせる曲だった。

 一人称で描かれた物語。主人公の一哉は、自分と、自分に関係のある世界について、クールに観察、分析する。彼はかなり生意気だ。理性が感情に勝っていて、感情をむきだしにしない。自分の感情がよくわからないのかもしれない。
 しかし、メシアンを弾くことで、しまいこんだ母親への愛情と憎悪が、むくむくとわきがり、ふきだしてくる。そして、小さな反乱を起こす。それは、彼と父親、2人の関係、彼の演奏に変化をもたらしていく。
 彼にとって、音楽に向き合うことは、自分に向き合うことだ。向き合うのは苦しいし、答えがでないこともある。その過程を、一哉と同じように自分がわからない読者は共有できるだろう。

 ストーリーとしては、一哉が反乱を起こすあたりがもっともおもしろかった。どうなるの?と心配する気持ちと、だめだよ、と彼を諌める気持ちとが混ざり、ページをめくる手を急がせた。

 バッハ、メシアンといったクラッシックとEPL、キース・エマーソンといったロック。パイプオルガン、リードオルガン、電子オルガン。音楽と宗教のつながりについて。一哉の言葉で語られ、説明される。
 また、技術的にはオルガン部でいちばんの一哉に足りないもの、心を音にのせる力というようなものを、技術は未熟な下級生の天野の演奏を通して、彼は熱く語る。
 音楽に詳しければ、さらに楽しめるだろうが、音楽がわからなくても、なんとなく、わかる。いや、わかったような気になる。作者は、音楽を作品にうまく溶けませている。

 学園物語につきものの恋はないといっていいほど、かなり淡い。母親のことがあって、一哉は女性に不信感を持っている。だから、無関心でいようとする。しかし、その演奏に惹かれたとはいえ、天野に対する感情は、恋を感じさせる。

 音楽を通して、自分を知っていく物語。中学校の課題図書だけれど、高校生向けではないだろうか。

第二音楽室―School and Music 』とのシリーズ作品。こちらはガールズが主人公らしい。読んでみたい。

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コメント

こんにちは。同じ本の感想記事を
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藍色さん

トラックバックありがとうございました。

こういうお話を読むと、音楽がたまらなく聴きたくなります。

私は音楽には疎いのですが、バロックをバッグミュージックに流しているのが好きです。

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» 「聖夜」 佐藤多佳子 [粋な提案]
俺は記憶のないころから鍵盤に触れてきた。聖書に噛みつき、ロックに心奪われ、メシアンの難曲と格闘する眩しい少年期の終わり。 2011年の第57回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(中学校の部)...... [続きを読む]

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