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2011年7月 5日 (火)

課題図書を読む(2011)『スピリットベアにふれた島』

 そろそろ梅雨明けでしょうか? さわやかな暑さの一日でした。

 青少年読書感想文全国コンクール中学校の課題図書。

スピリットベアにふれた島 (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

 ベン・マイケルセン作
 原田勝訳
 すずき出版

    

 殺人事件、とくに青少年のおかした残忍な殺人事件があると、犯人の精神鑑定が行われ、心神喪失状態ではなかったか、責任能力があったかの判定がされる。そのニュースを聞くたびに、わたしは、心神喪失状態でなくて、どうして普通の人間が人を殺せるのか?と、ふしぎに思ってきた。もし、心神喪失状態でなくして殺人を犯したとしたら、心神喪失よりさらに深いところで心が病んでいるはず。殺人犯には、刑より、治療が必要ではないかと考えてきた。
 それは、被害者、あるいは被害者の家族になったことがないからだ、犯人に厳しい罰を与えなければ被害者は浮かばれないという意見もある。そうかもしれない。当事者になってみなければ、気持ちはわからない。でも……それで被害者は救われるのだろうか? どうすれば本当に被害者は救われるのかろうか?
 そんな疑問に、応えてくれようとする作品だった。

 コール・マシューズは、同学年のピーターに執拗な暴力をふるい、重傷を負わせて逮捕された。彼は、15年の人生の半分を、警察のお世話になっていた。問題を起こして捕まるたびに、両親が弁護士をつれてきて、釈放してくれた。
 ところが、今回は前科があり、あまりに残忍な暴行のため、とうとう、家に帰ることも許されなかった。弁護士は、「成人と同じように裁かれるかもしれない」という。その前に離婚していた両親は、別々に面会に来たが、コールは無視した。見ばえばかり気にしておどおどしている母親、支配的で息子に暴力を振るう父親。コールはふたりとも大嫌いだった。
 定期的に面会にやってくる少年保護観察官のガーヴィーは、「サークル・ジャスティス」の申請を考えてみないか」と提案する。それは、ネイティブ・アメリカンの人々が行ってきてた、魂の救済のための裁判制度。人々の話し合いにより、加害者を罰するのではなく、加害者・被害者双方の救済を目指す制度だった。
 コールは懲役刑を逃れるために、反省しているかのように装い、「サークル・ジャスティス」を受け、その話し合いにより、アラスカ南東部の無人島で1年間ひとりで暮らすことを命じられる。そして、少年保護観察官のガーヴィーとトリンギット族の古老エドウィンにボートで送られて、島に着く。泳ぎが得意なコールは、見送りのふたりが帰ったら、島から泳いで逃げだす計画だった。だが、自然ははるかに厳しく、コールの思うようにはいかず、島にいるはずのないクマ、スピリットベアが現れ……。

 コールは島で生死をさまよう。そこで、自分も含めた生きものの、必死で生きようとする本能を知ったとき、コールのなかで何かが変わりはじめる。さらに島での体験、スピリットベアや他の動物たちとの出会い、少年保護観察官やトリンギット族の古老の教えにより、コールは完全に変わるのだ。
 途中、コールとピーターの立場が逆転したような、被害者であるはずのピーターが加害者であるような錯覚に陥りそうになった。一貫して、コールの視点で描かれているため、コールに同情的になるせいかもしれない。だが、あまりに立派な変化は、都合がよすぎはしないかとも、思った。
 コールが、怒りをコントロールできなかった原因も、物語の進行につれて見えてくる。コールは、ある意味、被害者であるのも理解できる。だが、改心したからといって、赦されていいものだろうか、罪を犯した自分自身を赦していいものか?
 冒頭に書いた私の考えと矛盾するのだが、感情的に受け入れがたいものも感じた。赦しが救いになる唯一の方法だと理性ではわかるのだが、感情が、あるいは今までに培われてきた観念が、疑問をなげかけてくる。何度も読み返し、罪と罰と赦しと考えつづければ、作品の希望あるラストにたどりつけるだろうか。

 未消化な部分がたくさんある一方で、書きとめておきたい言葉があちこちに散らばっている。とくに、ガーヴィーとエドウィンの言葉は、「目をむけた先にあるものが現実になるんだ」「どちらを見るかは自分で選べ」など、示唆に冨み、生きるうえで支えになりそうだ。深く、考えさせてくれる一冊だ。

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