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2011年7月21日 (木)

課題図書を読む(2011)『野川』

 今日から夏休み。

 私の市の図書館では課題図書は7月から1週間貸し出しに。
 これからは、子どもたちが読む番。これで、最後の紹介になりそうです。今年はちょっとしか読めなかったなあ。 しかも、紹介文の出来も悪く、申し訳ない。 

 青少年読書感想文全国コンクール高等学校の課題図書。

 『野川

 長野まゆみ作
 河出書房新社

     

 井上音和は中学2年生の2学期に都心の学校から、新宿から電車で30分ほど離れた町へ引っ越してきた。父親が事業に失敗、不仲だった両親が離婚し、父親とともにみすぼらしいアパートで暮らすことになったのだ。
 転校先の中学の担任は河井という国語教師で、形式的な同情や励ましの言葉は口にせず、別れ際、音和に聞こえるだけの声で「意識を変えろ、ルールが変わったんだ」という。
 初登校の日、音和は追い越していった男子生徒に「踏んだな」と声をかけられる。ネコか犬のババ(糞)だった。生徒は新聞部の3年生の吉岡だった。吉岡は音和を新聞部への入部を誘う。
 新聞部は伝書鳩を飼って訓練していた。そのなかに翔ぼうとしない鳩コマメがいた。コマメは音和の腕にのり、音和は鳩に興味を持ち、さらに顧問の河井先生の強引な勧誘もあって、次期の部長として入部する。

 音和は、崖から突き落とされたような生活の変化に、不満をもちながらも、誰かにあたるわけでも、爆発するわけなく、淡々と従っていた。しかし、河井先生や部活の仲間との出会い、彼らとの学校生活が、音和の毎日に安らぎと精彩をあたえ、音和は環境の変化のなかで屈折せず、のびのびと主体的に生きていくことができる。

 たくさんのことがからまっている作品だ。
 まずは、話を聞くことで、実体験したように心に作られるイメージのすばらしさ。本を読むこと、人の話を聞くこと、学ぶことの意義。
 ストーリー展開では、音和と父親の関係の変化。翔ぼうとしない鳩コマメの成長。
 そして、父と、先輩吉岡の兄を通して、失敗したときの生き方について。
 さらに、知識としては、伝書鳩について、野川流域の地形に隠された壮大な歴史について。
 読み手によって、いろいろな読み方ができそうだ。

 わたしとしては、河井先生の話に魅了され、彼のような教師に会いたいと思った。また、言葉からのイメージは、私が活動しているストーリーテリングのお話にもつながり、嬉しく思った。
 ただ、地形、地層については、地理お馬鹿な私にはついていけなかった。先生は、「ことばだけで連想できるものだけで、思い描くことが大事なんだよ。だから、きょうは地図も表も見せなかった」(p150より引用)というが、悲しいかな、わたしには、ほんのちょっぴりしかイメージできなかった。それに反して、作品のはじめあたりで先生がかたる蛍のイメージは鮮やかに頭の中に広がった。
 これは、知識、体験の違いだと思う。もし、わたしが武蔵野台地あたりに住んでいた、野川流域を知っていたら、もっとイメージすることができただろう。逆に蛍は、何度も見たことがあるから、しっかりイメージできるのだ。体験しないことも、人の話を聞いたり本を読むことで、体験することはできる。でも、それは、ある程度の体験があってのこと。音和たちはその地域を歩き、鳩を飼い、豊かな体験をしている。
 体験と想像、どちらも大切であることを書いてほしかったとも思う。

 正直いって、盛り上がりがあって、読後、大きな感動がある本ではない。しかし、音和とともに体験し、おもしろく読める。主人公とともに、感じ、考える本というものかもしれない。

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