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課題図書を読む『リキシャガール』

高学年の部の課題図書

女性の自立と家族の絆がテーマの本です。

リキシャ★ガール (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)
 ミタリー・パーキンス作
 ジェイミー・ホーガン絵
 永瀬比奈訳
 鈴木出版

     

 バングラデッシュの10歳の女の子ナイマは、見事なアルポナを描くことができる。アルポナというのは、祝日の日に、女の子が家の前の敷石や小道に描く模様のことだ。
 ナイマの父親はリキシャの運転手で、このごろ新品のリキシャを買った。そのローンを支払うために夜明けから夜中まで働きとおしに働いている。
 ナイマの友達サリームは男の子だから、リキシャを父親と交替で引っぱることができる。サリームが働いて稼いでいる間、サリームの父親はゆっくり家で休むことができるのだ。でも、ナイマの家では、子どもはナイマと妹のラシダだけで男の子がいないので、お父さんひとりで働かなければならない。いくらアルポナが村一番でも、女の子はお金を稼ぐことができない。ナイマは自分が女の子にあることが悔しくてたまらない。
 ナイマは、自分が男の子のふりをすればリキシャを運転でき、お父さんを手伝ってあげられるのではないかと思う。そこで、お父さんが少し休憩しているとき、こっそりリキシャを運転してみたが……。

 異国情緒にあふれる物語だ。リキシャ、アルポナのほかにも、サリーやサルワール・カミーズなどの服(巻末にはサリーの着かたも)、カレーやレンズ豆といった食べ物がさりげなく出てくる。
 こうした異国の衣食住を交えて伝えようとしているのは、この国の新しい動きだ。それは、この国にめばえ、育ちはじめた新しい意識――男社会の中で男たちに従属させられてきた女性たちの自立、自己尊重への意識改革だ。
 この物語では、ナイマも妹も、母親も、男たちにしいたげられてはいない。ナイマの父親は家族を守ろうとするやさしくて懐の大きい人だ。そしてナイマも、自立したいという気持ちからではなく、貧しい家の家計を助けたい、お父さんに楽をさせてあげたいというやさしい気持ちから、お金を稼ぎたいと考える。
 家族への愛情から、自立への意識が生まれ、自立することで自分を発揮できるようになる。女性の自立というと闘争的な感じがするが、家族への愛が原動力になっている物語だから、全体を通して穏やかであたたかい。女性の自立と家族の愛が反目しあわずに両立しているのだ。だから読んでいていてほっとする。なじみのない異国のことでも、読み手の子どもたちは、ナイマの気持ちと行動をすんなりと理解し、ハッピーな気持ちで読み終えられるだろう。

 ところで先日『私は売られてきた (金原瑞人選オールタイム・ベストYA) 』を読んだ。『私は売られてきた (金原瑞人選オールタイム・ベストYA) 』でネパール人のヒロインは、家計を助けるために売られていく。貧困から、両極端の方向へ進むふたりのヒロインを見ると、複雑な思いにかられる。ナイマのように、親の愛に恵まれ、希望を持って明るく歩ける道が子どもたちの前に開かれることを願う。

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