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2010年7月12日 (月)

課題図書を読む『ハサウェイ・ジョウンズの恋』

高等学校の部の課題図書

 舞台はゴールドラッシュ時のアメリカ。でも著者はドイツ人で、原書はドイツ語で書かれているから、なんだか不思議だ。

ハサウェイ・ジョウンズの恋
 カティア・ベーレンス(Katja Behrens)作
 鈴木仁子訳
 白水社

     

 アメリカ、ゴールドラッシュの時代。若いハサウェイ・ジョウンズは、今のオレゴン州ローグ河界隈で、金鉱堀や農夫たちに、生活必需品や鉄砲の弾薬、郵便をラバで届けてまわる仕事をしていた。父親は小屋にいて、木を切り、狩をし、パイプをふかしていた。そして息子が長旅から帰ってくるときまって「戻ったか……」というのだった。ハサウェイは、父親と小屋にいるときは寡黙だが、小屋をでたとたんに陽気になり、ちょういしっぱずれな歌をうたい、物語をつくっては荷を届けた人々に語ってか聞かせた。
 ハサウェイには気になる娘がいた。トーマス農場のフロラ・デルだ。彼女に手紙を届けて彼女と言葉を交わし、コーヒーをご馳走してもらい、彼女の弾くピアノ(父親が彼女に買いラバで運んだのだ)を聞かせてもらい、彼女だけのためにつくった物語を語るのは、おそろしいほどドキドキすることだった。

 ハサウェイ・ジョウンズの恋と、彼が荷を運んでめぐる人々の物語だ。ハサウェイとフロラの恋がじれったいほどに不器用にゆっくりと進展する一方で、周りの人々のあいだでは、盗みに殺し、野蛮な事件が次々と起こる。一攫千金を夢見て、その日暮らしをする荒くれ男たちが集まり、人の出入りの激しいコミュニティだ。欲と情がさらけだされた、良くも悪くも人間の素の姿が見える。
 そのなかで、ハサウェイが、先住民インディアンに対するの考えを、フロラにより変えられていくところが印象的だった。フロラの賢明さと思いやり、ハサウェイの素直な心、これもまた、人間の美しい素の姿だろう。

 ストーリーでぐいぐい引っ張っていく物語ではなく、しっとりした文章でこまやかに書かれた情景・情感を楽しむ一冊。ゆっくり読んでほしい。

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