« 課題図書を読む『建具職人の千太郎』 | トップページ | 心から楽しめる語りがしたいけれど…… »

2010年6月14日 (月)

永遠の少年のおとうさん

はたこうしろうさんの絵がとても楽しい本。

きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは…

  市川 宣子文
  はた こうしろう絵
  ひさかたチャイルド

      

「おとうさんはなんだってできるんだぞ!」これは、うちの夫が、息子と遊んでいるとき、よくいう言葉だ。わたしは(はいはい、そうですか)と、内心あきれながら聞いていたのだが、その夫にそっくりのおとうさんがこの作品に登場した。

 あっくんのおとうさんは、ときどき帰ってくるのがすごく遅い。次の日、おとうさんは遅くなったわけをあっくんに話してきかせる。そのいいわけ話が4編。小タイトルは4編とも「きのうの夜、おとうさんは、」ではじまり、それぞれ「あなをほっていてたんだよ」「ボートをこいでいたんだよ」「ホームランをうったのさ」「町に春をよんだよ」と続く。

 どのいいわけもファンタジー(ほら話ともいう)だ。帰宅途中におとうさんは、誰かに会って、むきになって奮闘し、結果的に誰かの手助けをすることになる。おとうさんのがむしゃらな奮闘ぶりがとても楽しい。おとうさんの手助けは、世界の自然の不思議につながるから、小さな読者の好奇心も満足させるだろう。

 おとうさんをがむしゃらに奮闘させるのは、「○○できる?」「○○できないでしょう」という言葉だ。この言葉をきいたとたん、「○○できないかって。だれにむかっていっているんだ?」と、おとうさんの負けん気魂に火がつく。おとうさんはもはや、妻子の待つ家路を急ぐおとうさんではない。ひとりの負けず嫌いの少年だ。なにもかも忘れて、目の前のことに没頭する。
 きっとおとうさんは、おとうさんになっても、心の中には永遠の少年がいる。そして息子の前で親然としてふるまいながらも、少年の心がちょこちょこ飛び出してきて、息子の遊び仲間になり、よきライバルにもなっているのだろう。
 そのなかにおかあさんの入るすきまはほとんどない。男と男の世界。だからだろう、この本におかあさんはちょっぴり出てくるけれど、影が薄い。
 章と章の間には、あっくんがおとうさんと遊んでいる場面が描かれている。あっくんはもちろん、おとうさんも心から楽しそうだ。仲間として真剣に遊んでくれる少年のおとうさんが、男の子は大好きだ。

 永遠の少年のおとうさん、帰りが遅くなって息子さんとの時間が足りないと思ったら、ぜひ、この本を読んであげてね。そして、もっともっと忙しくて、そのひまもないおとうさんなら、おかあさん、あなたの出番です。お父さんは仕事をいっぱいしてすごいのよ、といいながら、ぜひ、読んであげてね。

Tetu_bn_170

« 課題図書を読む『建具職人の千太郎』 | トップページ | 心から楽しめる語りがしたいけれど…… »

児童読みもの」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 永遠の少年のおとうさん:

« 課題図書を読む『建具職人の千太郎』 | トップページ | 心から楽しめる語りがしたいけれど…… »

Amazonアソシエイト

  • 野はら花文庫は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。
  • Amazon、Amazon.co.jpおよびAmazon.co.jpロゴは、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。