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2010年2月18日 (木)

胸がすく『こんな私が大嫌い!』

 たいていの人は私ががんばりやだと思ってくれる。私もそう思う。でも、その裏で、ものすごく劣等感が強いのも確か。そんな私の正体を、気持ちいいくらいに、ざくっと割ってあばいてくれたのが、この作品だ。

こんな私が大嫌い! (よりみちパン!セ)

 中村うさぎ著 理論社

        

「自分を愛さなければ人を愛せません。自分をまず愛しましょう。自分を受けいれましょう」。落ちこんだとき、生き方の本を開けば、そんな言葉によく出会う。そのとおりだと思い、その言葉で自分を励ましてみる。私は私でいい、私はそのままで素敵! でも相変わらずまわりには、自分よりずっと美人で頭がよくて、おまけに性格もよい人がいて(天は二物を与えずなんてうそ)、その人はなにをやっても自分よりうまくやる。やっぱり、劣等感を抱かないではいられない。そのうえ、自分がその人に嫉妬してイジワルしちゃったらもう、自分がそのままで素敵なんて、ぜったい、ぜったい思えない。で、また落ちこむ。
 そもそも落ちこんでいるときは、自分が受けいれられない、自分が愛せないから、悩んでいるのだ。それを愛しましょう、受けいれましょう。といっても、土台、無理な話。じゃあ、この大嫌いな私を、どうすればいいのよ!? というところを、きれいごとなしにと教えてくれるのがこの本だ。

 作者は、中村うさぎさん。美容整形・買い物依存症などの自らの体験、拒食症でなくなったシンガーのカレン・カーペンターズの悲劇を例にあげながら、「自分が嫌い」「自己評価が低い」とは、どういうことなのかを、ずばっと書いて、「自分との付き合い方」を覚えて! 生きるのがらくになるよ!と語りかける。

 対象は、目次にあるように「自分の顔が嫌い!」「自分のカラダが嫌い!」と感じやすい思春期、十代の女の子たち。でも、作者のうさぎさんと年齢が近い、すでにオバサンの私も、いまだに、好きになれない自分がいて、つらいから(精神年齢が十代から成長していないということか)、ずばりと核心をつかれて、胸がすく思いだった。

 また、巷でいわれていることが、この本を読むことでさらに理解が深まった。たとえば、幼少期の親の接し方が、自己評価の低さにつながるということ。しかし、なんでもかんでも親のせいにして甘えすぎているという思いを(これは、この本がいっているわけではないが)強くした。だって自己評価を低くしているのは自分だ(その自分の考え方に親が大きな影響をあたえているとしても)。また、話題になっている勝間和代さんと香山リカさんの幸福論論争は、つまりは、こういうことだったんだと理解した(これもまた、この本に直接書いてあるわけではない)。

 親世代は、この本をわが子への思いにも応用できる。「自分」を「わが子」に置き換えて読めば、どうして、わが子の欠点にはこんなにも腹がたつのか、ものすごく納得でき、子育てのヒントになるだろう(子育てでは、子どもをありのままに受けいれようといわれるけれど、実際にはかなり難しいことだもの)。

 十代の女の子に限らず(男の子はちょっと手にとりにくいかもしれないけれど)読んでみてほしい。自分嫌いの正体がつかめたら、きっと人生がもっと楽しくなるはずだ。

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コメント

わ、これ読みたいです。
中学年くらいから、クラスの中での自分の立ち位置みたいなのが、ぼんやりわかってきていて、やっぱり自己評価が低いなあと感じるうちの子。この分野では~というのがある、たとえば運動ができる、おもしろい、人気があるみたいなメジャーな子なら悩まないのかもしれませんが、その時期に引っ越してしまったので、余計そうなのかなと感じてます。

どうしても上と比べられちゃう下も似たようなもので、兄弟げんかの半分くらいはそのせいのような気がしてます。

うん、ぜひ読みたいです~。

shoko さん

わあ、上のお子さん、もう中学年になられたんですね。中学年って、まだ思春期ではないけれど、自分がでてきて、変化のある大切な時期だなと思います。

兄弟の問題はどこでもありますよね。本ではカーペンターズのところで、そのことにもすこし触れられていました。うちは一人っ子ですが、自分自身には兄がいて、いろいろあったからわかります。

『こんな私が大嫌い!』読んでみてください。子どもさんや自己評価への見方が、すこし変わるかもしれませんよ。

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