『チームひとり』ひとりとふたり、そして仲間
図書館の新刊コーナーでみつけた。
『チームふたり (学研の新・創作) 』『チームあした (学研の新・創作)
』の続編だ。このシリーズ、地味だけれど、読まずにいられない。
吉野万里子作 宮尾和孝絵 学習研究社
小学4年生の広海は引越しで転校した。前の学校では双子の兄の大洋と、卓球部にはいり、ダブルスを組んでいた。だが、兄は新しい学校では、サッカー部に入る、広海と同じクラブには入りたくないという。広海は仕方なくひとりで卓球部に入る。
ふたごでいるのは、どんな気持ちだろう。生まれたときからいつもいっしょだ。ふたりでひとり。でも、それぞれが個性をあるから、ひとりとひとりのふたりだ。
大洋と広海は、兄と弟という立場のせいか、もともとの性格なのか、兄の大洋は落ち着いているのに対して、弟の広海はお調子ものだ。広海は、まわりに心遣いなく思ったことをすぐ口にしてしまう。だから敵もできる。でも、いつだってそばには兄がいて、ひとりじゃないという安心感があるから、のびのびやれた。兄あっての広海だった。
ところが、転校してからひとりで卓球部に入らなければならない。兄とはじめてはなれて、広海の世界は変わる。仲間との関係でも、卓球でも、フォローしてくれる兄がいない。広海は陽気に振る舞いながらも、内面では、まわりとの調和を意識しはじめる。
タイトルでわかるように、ひとりだちが、この巻のテーマだ。兄離れ、卓球でのひとりだち、ひいては、社会でのひとりだちだ。ひとりとふたり、そして仲間。その関係が、ふたごであること、卓球のシングルス、ダブルス、卓球部全体のチームに絡めて描かれている。
一見自信満々に見える広海の、無意識に人に頼る弱さを卓球部の大滝コーチが見抜く。コーチは、思い切った方法をとる。そして、練習、試合を通して、広海を大きく成長させる。
だが、スポ根ものの作品ではない。広海とコーチの会話は友達の軽いのりで、才能もある広海は、けっこう楽しく練習しながら、すいすいと伸びていく。そのあたりが、この作品のものたりないところでもあり、楽しいところでもある。
このシリーズは、1巻ずつ、大地、純、広海と、受け継がれていく東小卓球部の部長を主人公にしてきた。この巻では純はもちろん、大地も、大地の家族も登場する。『チームふたり (学研の新・創作) 』では、大地の家族には、大変なことが起きていたから、その後どうなったかが見られることは、とても嬉しかった。
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