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ついに最終巻『大海の光―ステフィとネッリの物語』

 大好きなシリーズを読み終わってしまいました。
 切ないけれど希望に満ちた素敵なラストでした。
 読み終わってしまったのが、哀しい。ずっと読んでいたいのです。

大海の光―ステフィとネッリの物語
 アニカ・ソール作
 菱木晃子訳
 新宿書房

        

 ナチスの迫害を逃れるため、1939年にオーストリアのウィーンからスウェーデンの小さな島に姉妹ふたりで移住してきたステフィとネッリの物語の最終巻。

 最終巻は、ドイツが降伏した1945年の春からはじまる。姉のステフィは高校に飛び級で進学し、すでに2年生で卒業の年を迎えていた。卒業後は働いて、大学へはいるための資金をつくるつもりだ。妹のネッリも島の中学を卒業する年になった。勉学が好きでないネッリは進学せずに学校の食堂で見習いとして働くことになっていた。
 終戦の知らせが届き、人々は喜びをわかちあっていた。だが、姉妹は複雑な思いを抱いていた。音信不通になったパパの消息はわからず、帰る家はすでにない。ネッリは戦争が終わった後も養父母の家にいられるかどうかが不安だった。
 喜びにわきかえるイェーテボリの町で、ステフィは、かつて恋していたスヴェンに4年半ぶりに再会する。またネッリは、夏の間、養父母の家を借りた女性画家のモデルを務める。

 3巻まではステフィを中心に描かれていたが、この間では、姉妹が交互に描かれていく。長い間、両親の元をはなれて暮らすことの意味は、5歳違いの姉と妹では違う。
 はじめて島へきたとき姉妹は12歳と7歳。妹のネッリはまだ幼く、島になじんで暮らすうちに、ウィーンでの記憶は薄らいでいる。島が故郷、養父母が両親ともいえるかもしれない。姉のステフィにとっての故郷はウィーンだ。だがそこにもう自分の家庭がないとわかっている。
 ふたりとも、よりどころがなく、将来が見えなくて不安なのは同じだ。そんななか戦争が終わり、岐路が訪れる。

 ネッリは選ぶのがつらくて泣いた。

   どうしして、あたしはひとつのことを選らばなければならないの?(p294)

 前へ進むには大きな痛みが伴う。

 戦争により、運命を翻弄させられた二人だ。だが、こうした痛みを伴う岐路は、痛みの大小はあれ誰にでも訪れるだろう。しかし、わたしたちは自分の選んだ道を信じて生きていきたい。

 ステフィの養父はいう
 
   人生はなるようになるものさ。水平線の向こうには、常になにかあるんだ。(P292)

 自分の人生を生きようとするとき、意志の強さがかかわってくる。この物語では、姉妹を取り巻く人を通して意志についても描かれている。口少ないが意志を通すメルタ(ステフィの養母)、人あたりはいいが自分の意志がないアルマ(ネッリの養母)、決して意志を曲げないユディス(ステフィたちと同じように移民してきたステフィの友達)、親に逆らうことができないスヴェンなど。それはその人の元々の性格、それまでの生き方により形成されてきたものだろう。
 運命というべき、時代の流れ、人や出来事との出会いのなかで、人は自分の人生を作っていく。
 戦争が与えたものは途方もなく大きい。けれど、このステフィとネッリの物語は、運命のうねりのなかでどう生きるかといった普遍のテーマを持つ。

 最終巻のラストから、ステフィとネッリの新しい人生ははじまる。タイトルが示すとおり、きらきらと輝き、その向こうに未知のなにかがある大海の入り口に、ふたりは出たばかりだ。

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