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課題図書を読む『ぼくの羊をさがして』

 わたしは犬を飼ったことがないのだが、よその家の庭に鎖でつながれている犬をみて、飼い主が遊んでくれないときいつもひとりでさびしくないのかな?と、たまに考える。犬にそんなことを思う気持ちがあるかどうか知らないのだけれど……。
 この本の主人公の犬は、考える哲学的な犬だ。

ぼくの羊をさがして

 ヴァレリー・ハブズ作
 片岡しのぶ訳
 あすなろ書房

     

 ぼくはジャック。牧羊犬として働くボーダーコリーの子どもで、羊牧場を経営するボブさんに、ほかのたくさんの牧羊犬たちといっしょに飼われている。ぼくの夢は、父さんのように立派な牧羊犬になること。でも、はじめて仕事につれていってもらった次の日、落雷で農場が痛手をうけ、ぼくたち子犬はトラックに乗せられ、別々に売られてしまう。ぼくは、ペットショップから女の子のいる家に売られたけれど、狭い庭につながれているなんて、ぼくのいるところじゃない。ぼくは逃げ出した。それからぼくの放浪の旅がはじまる――。

 ボーダーコリーの純血種であるジャックは、牧羊が自分の天職と信じ、牧羊犬の誇りを持っている。ヤギ飼いのおじいさん(このおじいさんから哲学的なことをたくさん教わる)、二人組みの男、サーカス団と、いろいろな人に出会い、生きるために自分にそぐわないことをしなければならない。でも、誇りだけは決して捨てず、これ以上は自分をまげられないことは、たとえ命と引き換えでもしない。そんな誇り高いジャックが、自分をまげても、だれかを助けたいと思った時、奇跡が起きるのだ。

 同じ課題図書の『しあわせの子犬たち (文研ブックランド) 』が、人間の視点で書かれていたのに対して、この作品は、徹底的に犬の視点から書かれていると初め思った。だが、果たして本当に犬の視点かどうかは疑問だ。ジャックがあまりにも洞察力があるので、犬であることに無理を感じる。
 この作品は、放浪する犬の気持ちを描いているのではない。自分の真の姿を求めて生きる人間の姿を、犬の放浪に映しだして描いている。そのなかで、幸せに生きるのに衣食住は大切だ。でもそれと同じ、いやそれ以上に自尊心、誇りの持てる仕事、そして、自分をすてても愛せる人の存在が、大切だとメッセージを送っているのだ。
 ジャックは、生まれたときから自分が牧羊犬だと知っている。そこのところが、自分探しからはじめるわたしたち人間と違うところだ。だが自分を牧羊犬と知っていることは、ジャックにとって幸いである一方で苦しみのもとでもあった。もし、サーカス団の花型犬として客たちを喜ばせることに生きがいを持ったとしたら、それはそれでまた、別のすばらしい人生、物語になると思う。だが、この物語では、もちろん、そうなってはいけない。ジャックは牧羊犬、それを貫き通す物語なのだ。

 第55回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の課題図書。
 読みなれた子でないと、高学年で読むのは難しいかもしれない。 

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