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課題図書を読む『縞模様のパジャマの少年』

 第55回青少年読書感想文全国コンクール 高校生の課題図書。
 中学生でも理解できるが、ラストの重さを考えると、安易に読まないほうがいいだろう。

 恐ろしい物語だ。その恐ろしさはつねに背後にひっそりとあって、そろそろと静かにしのびよってくる。読み終わってからしばらく震えがとまらなかった。

縞模様のパジャマの少年
 ジョン・ボイン作
 千葉茂樹訳
 岩波書店

     

 

 ブルーノは、ベルリンの閑静な住宅地にある3階建て(屋根裏と地下室をいれれば5階建て)の家で、両親、姉と暮らしていた。家にはメイドと執事、コックがいる。だが、軍人の父の仕事で、突然遠くへ引っ越すことになった。新しい家はさびしいところに1軒だけぽつんと立っていた。そして、2階のブルーノの部屋の窓からは「寒々として、不安な気持ちにさせるもの」(P27)が見えた。

 一貫して主人公ブルーノの視線で書かれていく。ブルーノは9歳。世界はまだ自分の周りだけで回っていて、まわりの物事を自分の限られた世界のものさしで測っている。裕福な家で不自由なく暮らしをしてきたブルーノのものさしは、幸福のばら色だ。だから、引っ越した先で新しく出会う出来事も、なんだか不安な感じがする、妙だ、と思いはしても、のんきに幸せな楽観的見方をする。
 だが、ブルーノより広い世界を知っている読者は、ブルーノに見えないところで何が起きているのか、察することができる。そして、ブルーノの視野がわずかに広がったとき、察したことを確認し、さらにブルーノの見えないことを察する。ブルーノは最後まで幸せで無邪気な少年だ。しかし、わたしたち読者はとんでもなくおそろしい悲劇がおこったことを知ることになる。

 この物語を通してわたしたちは歴史の負の遺産を自分にひきよせて読むことができる。

 ブルーノはなぜ何も教えられていなかったのだろう、教えられていれば起きえなかった悲劇なのに……。しかし、親なら教えないのが当たり前だろう。子どもが知るにはひどすぎる現実だ。大人たちは自分の子どもに教えられないほど間違った行動をしている。

 一方、大人たちに守られ何も知らないブルーノは、偏見を持たずに公正な目でまわりを見ている。無知なブルーノが、逆に真実を見ているともいえるだろう。そして、あの時代、多くの人が陥った間違いがどんなに愚かしいか、わたしたちに教えてくれる。

 その愚かしい間違いは、いまあなたのまわりにもあるかもしれない。目の汚れをふりはらって見てみよう。

第55回青少年読書感想文全国コンクール 高校生の課題図書。

中学生でも理解できるが、ラストの重さを考えると、安易に読まないほうがいいだろう。

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