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2009年6月28日 (日)

課題図書を読む『マタギに育てられたクマ』

 第55回青少年読書感想文全国コンクール 小学校高学年の課題図書。深いテーマを含み、子どもたちが、興味を持って読めるだろう。

マタギに育てられたクマ―白神山地のいのちを守って (感動ノンフィクションシリーズ)
  金治直美文 佼成出版社

    

 表紙写真に写っているのは、男の人と子グマ。子グマの胸には、三日月形の白い印があ 表紙写真に写っているのは、男の人と子グマ。子グマの胸には、三日月形の白い印がある。ツキノワグマだ。男の人はマタギの吉川隆さん。マタギというのは、東北地方などの山間部で代々、狩をしてきた人々だ。

 タイトルから、マタギと子グマの感動の愛情物語と思って読みはじめたが、そうではなかった。吉川さんと子グマの出会い、子グマの成長については半分くらい。ほかにマタギの歴史と暮らし、狩についてが詳しく書かれ、むしろこちらのほうに、わたしは惹かれた。
 とくに、物語仕立てで描く昭和初期の巻き狩りのようすが面白い。はじめて狩に参加した15歳の少年、正吉の目を主人公に、巻き狩りの方法、マタギの信仰、しきたりを解説しながら、ドラマチックに描いている。クマが現れてからの描写は手に汗を握る迫力だ。はじめて狩を体験する正吉の不安と期待、恐怖に、読者は共感できる。

 マタギは生きるために、山の生き物の命を奪う。それは命を落とす危険と隣り合わせの仕事だ。命がけで、命をやりとりする厳しい仕事をする男たちだから、独自のルール、山の神を畏れ尊ぶ信仰が生まれてきたのだろう。山ことばと里ことば、代々伝わる巻物、クマを倒したあとの儀式など、たいへん興味深い。
「山の神さまから恵みをわけていただく」と考え、山を敬うマタギの精神は、銃で獲物をしとめる現代のマタギにも引き継がれている。その精神があって、吉川さんも子グマを育て、成長したクマとなった今も飼うのだろう。

 狩で家族を養ってきた時代はすでに終わっている。生きるためにではなく、楽しむため、私腹を肥やすために、山の恵みを簡単に奪ってしまう時代、マタギの精神はうすれつつあるのではないだろうか。こうした本で子どもたちにマタギの精神を伝えられることの意義いは大きい。

bk1 に書いたのと同じ内容の書評です。

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