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課題図書を読む『おこだでませんように』

今年も、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書を、できるだけ読んでいこう思う。

まずは、小学生低学年向き。今年の七夕は、小学校でぜひぜひ、これを読み聞かせしたいと思っていたら、課題図書になってしまった。低学年だけでなく、高学年、中学生も、そして親も先生も胸にぐっとくる本だ。

おこだでませんように
   くすのき しげのり文
   石井聖岳絵
   小学館

        

わたしたち大人はときどき、子ども時代を思い出し、あー、あのころは悩み事もなくて幸せだったなあ、などと、考えなしにつぶやいてしまう。でも、本当にそうだろうか? たとえばわたしの場合、家族に愛されとても幸せな子ども時代をすごした。でも、苦い思い出もしっかり残っている。お手伝いしていてうっかり卵を床に落っことして割ったとき、たまたま母親が急いでいて機嫌が悪かったために、ものすごくおこられた。学校で授業中、鼻の先になにかついている気がして、一生懸命目を寄せて見ていたら、先生の叱責の声が飛んできて、びくっと縮み上がった。

 親や先生の絶対権力の前で、子どもはか弱い存在だ。一方的におこられて反論できず、気持ちをぐっとこらえるしかないときがたくさんある。そんなとき、わかってもらえない悔しさといらだち、悲しみとあきらめ――そんないくつもの感情が混ざり合った、ぐちゃぐちゃな気持ちになる。

 この絵本の表紙絵の男の子「ぼく」の横顔は、不条理な目にあった子どもが理解してくれない大人に顔を背けて精一杯の反抗をしている顔だ。そう、この絵本は、子どもの正直な気持ちを、「ぼく」の素直な言葉でストレートに伝えている。

「ぼく」は、たぶん、大人からおりこうさんと思われていない。だから、

 ぼくは いつも おこられる。
 いえでも がっこうでも おこられる。

「ぼく」がおこられることをするのは、そのときそのときで、ちゃんと理由がある。でも、おかあちゃも、先生も、理由を聞かずに「ぼく」をおこってばっかりいる。「ぼく」は、おこられたくない。ほめられたい。


 むかし子どもだったわたしには、「ぼく」の気持ちがひりひりと痛いほどわかる、と同時に、「ぼく」をおこる母親と先生の気持ちも身にしみてわかる。今、親であるわたしは、子どもの事情や気持ちを考えずに一方的にしかりつけてしまった経験は数え切れないほどあるし、これからだって同じ失敗をくりかえさない自信もない。子どもには申し訳ないけれど、冷静に先入観なしで判断し、感情をコントロールするのは、大人にとってもたいへん難しい。

 さて絵本では、親や先生と「ぼく」の気持ちが通じ合い、「ぼく」にこの上なくすばらしいラストが訪れる。読んでいたわたしは、心から安堵し、嬉しくなり、あたたかで幸せな気持ちになった。
 親だって、そしてきっと先生だって、おこりたくない、ほめたいのだ。この絵本のようになりたいと思っても、現実にはそうもうまくはいかないもの。でも、心から願っている。だから、親や先生が読み聞かせして、その気持ちを子どもに伝えてほしい。
 第55回青少年読書感想文全国コンクールの小学校低学年の課題図書。でも、低学年に限らず、子どものいる家庭とクラスで、読み聞かせしてほしい。親と先生のの読み聞かせの課題図書だ。

bk1 に書いたのと同じ内容の書評です。

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絵本」カテゴリの記事

コメント

好きな本が課題図書に選ばれたりすると、ちょっとがっかりする私です。なんでだろう?義務感で読まれることへの変なこだわりかな。でも、知らなかった本に課題図書として巡りあえることもあるしなぁ。けど、どうしてこの本が課題図書?本を売るためのひとつの大きな宣伝?と思うこともある。
課題図書に関しては、なんだかグチグチ感想になっちゃいます。感想文にコンプレックスあるせいかもね。でも!『おこだでませんように 』は読んでみたいです。石井聖岳というお坊さんのような名前の方の絵、好きです。

そらこさん、こんにちは
こちらの記事を見て、図書館で借りてきました。
明日、隣町で読み聞かせの研修会の講師をすることになっているので、この本を使ってみようかなと思ったのです。(課題図書だし)
声に出して読む練習を始めたんだけど…。
途中から泣けて泣けて…
真っ暗な部屋で布団をかぶってる場面のところから、最後まで。もう泣きっぱなし。
こりゃあ、気持ちが昇華するまで練習を繰り返さないと、人前では読めないことを発見。
あとがきも読んで、また涙。
あ~あ。私、年なのでしょうか…。

あそびっこさん

実は、わたしもこの本が課題図書と知ったとき、あ、やだとちらっと思ったのです。課題図書になるということは、自分の好きな本が評価されているわけで、喜ぶべきことなのだけれど。なぜでしょう。課題図書に選ばれると、自分で選んだことにならなくなって、それがいやなんだろうか。複雑です。

でも、いい本です。ただ、これで感想文をというのは、かわいそうかも。どうか、おこられて、書かされませんように。

harry さん

涙がこみあげてきたとのこと。そうなんです。わたしも、はじめは、これは、とても読めないと思いました。とくに1回目は、ぐしょぐしょ。でも、どうしても読みたくて、何度か練習しているうちに、少し距離をおいて読めるようになりました。

うちでは、中2の息子が何度も読み返しては「いい話だねえ」としみじみいうのです。家でも学校でも、つらいことあるんでしょうね。(その原因のひとつはわたしだ~)

隣町の研修会で、読みました。
やっぱりグッときたけど、涙はこぼしませんでしたよ~~

15人のボランティアさんのうち、なんと7人の方が泣いて…。
学校司書の先生も、目がウサギ状態。
講義のしめくくりに読んだものだから、そのあとの「質問コーナー」では、みんな鼻声。
う~ん。
「おこだでませんように」おそるべし。

harry さん

おお、読まれましたか!!
感情をこめて、でも、こめすぎずにぐらいが、聞き手もぐっとくるんだと思います。
ぼくの気持ちも親や先生の気持ちも、じんじん伝わってきますものね。みんな、子どもたちのことを愛しているんだなあ。
ウサギさんたちの「質問コーナー」は、なんだかくすぐったいですね。

この絵本、低学年向き課題図書だけれど、大きい子のほうがよりじんじんくるかもと思うのです。

今度高学年の読書週間に読んでみようかな。

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