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2009年5月 5日 (火)

物語世界に浸る幸せ 『聖人と悪魔―呪われた修道院』

 赤木かん子さんの『子どもに本を買ってあげる前に読む本』によれば、「二00八年からの新しい時代は、ミステリーが元気になってきた」とか。この本もそれに当たるのかな?
 作品に静かに漂う、中世イタリアの雰囲気が素敵で、本を読む幸せを味わった。女の子にお薦めだ。

聖人と悪魔―呪われた修道院
  メアリ・ホフマン作
  乾 侑美子訳
  小学館

          

 1316年のイタリア、ウンブリア地方。モンタクート男爵のひとり息子シルヴァーノは、裕福な農夫トレマーゾの若い妻アンジェリーナに心を寄せていた。
 ある日、トレマーゾが短剣で刺されて殺される。第一発見者はシルヴァーノで、死体に刺さっていた短剣もシルヴァーノのものだった。殺人の容疑をかけられたシルヴァーノは、父の計らいで、ジャルディネットの聖フランシスコ修道院に見習い修道士としてかくまわれる。だがその修道院で、次々と殺人事件が起きる。
 男子修道院の隣には、キアーラ女子修道院があり、そこに、両親のない少女キアーラが、兄に厄介払いされて無理やり見習い修道女として入れられていた。
 アッシジにある聖フランシスコ大聖堂では、地下にある聖マルティヌス礼拝堂のフレスコ画の制作がなされていた。ふたつの修道院は、フレスコ画に使う顔料をつくっており、顔料をアッシジに運んだ。その運搬を通してシルヴァーノとキアーラは言葉を交わすようになる。

 中世イタリアを舞台にした推理小説であり、恋愛小説、歴史小説でもある。
 次々と不思議な殺人が起こるなかで、さまざまな欲と情がからむ人間関係が立ち現れてくる。俗世間からはなれた修道院の清貧さと、地位、金、美、そして愛により動く人々の生々しさが対象的に描かれている。シルヴァーノとキアーラ――ふたりの主人公は美青年貴族と美少女であり、とりまく人々も豪商や豪農ときらびやかだ。中世イタリア、修道院という背景もあわせて、明と暗、静と動の入り混じる世界にすっぽり入りこみ、あこがれのため息をつきながらページを繰った。

 犯人探しの推理と人間模様、ふたつの恋の行方も気になる。だが、なにより興味深いのは、大聖堂の礼拝堂に描かれていくフレスコ画とその顔料作りだ。
 シルヴァーノ、キアーラは、修道院で顔料作りを習いはじめ、大聖堂では、聖人たちの生涯を描いたフレスコ画を眺める。ふたりが画伯から直々にうけるフレスコ画の細部にわたる説明や、「大地の緑」「龍の血」といった印象的な顔料の名前は、わたしにとって未知なる世界で、好奇心と想像力をかきたてる。
 読後、作者があとがきで紹介しているHPでフレスコ画をながめ、まさに本の中で描かれているどおりであるとわかり嬉しくなった。アッシジはユネスコ世界遺産に登録されている。ぜひ、自分の目で見てみたいものだが……。

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