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2009年1月11日 (日)

自身の存在を拒絶され続けるとき

ローズマリー・サトクリフは憧れの作家。

名前にときめき、本のタイトルもたくさん知っているのに、実をいえば、わたしが読んだのは『イルカの家』と『ケルトの白馬』のみ。アーサー王のシリーズは読んだかなあ、途中で挫折したかなあ、という体たらくなのだった。

それというのもわたし、歴史が大の苦手で、背景がよくわからなくなってしまうと、敬遠していたのだ。でも、だったら歴史を調べながらゆっくり読めばいいじゃない?という声が、ふと聞こえてきた。

そこで、まず図書館で借りてきたのが『ケルトとローマの息子 』。

       

高校の時の世界史の教科書を引っ張り出してきて、茶けたページを参照にし、世界地図で場所を確認しながら(そんなことしなくても巻末には地図があったのだけれど……)、じっくり読んだら、なんとおもしろいこと。

今年は図書館にある作品は読破したいな。

ケルトとローマの息子
  ローズマリー・サトクリフ作
  灰島かり訳
  ほるぷ出版

 紀元2世紀、ローマ帝国のハドリアヌス帝(五賢帝のひとり)の時代、帝国は繁栄、安定していた。領土は広がり、ブリテン島のブリタニアも属州にされていた。
 そのブリタニアの海岸で、ローマの商船が座礁した。そのとき、ひとりだけ生き残った赤ん坊は、ケルト人に拾われ、ベリックと名づけられて、養い親の元で、ケルトの部族の子と同じように大切に育てられる。だが部族の人々は、この子が、自分たちを占領したローマ人の血筋であることを、決して忘れてはいなかった。ベリックが9歳になり、いよいよ戦士の訓練をはじめる時になったとき、人々の偏見があらわになる。

 部落での迫害からはじまり、ベリックは、受難に次々とあっていく。希望の芽生えと絶望の繰り返しで、救われたかと思うと、また苦しみのどん底に落とされる。それは、あまりにむごく、どうか彼を助けてあげて、と祈りながら読んだ。
 人が自身の存在を拒絶され続けるとき、人として扱われないとき、その境遇は、どう人を変えるのか、気力をそいでいくか、人間性を失わせるか。そして、人間性を取り戻させるものはなにか。過酷な運命に翻弄され続けるベリックの姿を通して、見えてくる。
 ケルト人の部族、ローマ市民の暮らし、奴隷たちが漕ぐガレー船、百人隊軍団、ブリタニアの干拓。当時の歴史もありありと描いている。2千年近くも前の世界がどうだったのか、思いを馳せた。

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