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2008年6月30日 (月)

課題図書を読む『兵士ピースフル』

高校生向けのの課題図書。表紙の2匹の蝶が印象的だ。

兵士ピースフル
 マイケル・モーパーゴ作
 佐藤見果夢訳
 評論社

       

  第一次世界大戦時、イギリス軍はフランスとベルギーの国境付近でドイツ軍と戦った。西部戦線といわれるその戦いに参加した17歳のイギリス軍兵士トモ・ピースフルは駐屯地で、1916年6月24日の夜から翌朝にかけて、夜通し兄チャーリーとの思い出をたどっていく。なぜなら、翌朝には――。

 229ページのそれほど厚くない本だが、内容は非常に濃厚だ。前半では、大佐の領地でのトモとチャーリーの少年期の暮らしを描き、後半では、入隊後の軍隊と戦地の状況を伝えている。
 3歳年上の兄チャーリーを、トモはつねに追う。青年期までの3歳の年の差は大きい。しかも兄のチャーリーはまっすぐで豪胆な性格で、追い越そうとしても追い越せない偉大な存在だ。トモは兄を慕い誇りに思い、チャーリーはことあるごとに弟をはげましかばう。

 大佐の領地での暮らしは貧しく、不条理なことがたくさんあり、家族につらく当たる人もいる。でも兄弟の共通の友であるモリーと三人でいれば楽しい。それにいざとなれば、どの人も救いの手をさしのべる。人間らしいあたたかさはすべての人の中にあった。
 ところが、戦争、軍隊はつまりは冷酷な人殺しだ。軍隊には気のいい兵士もいたし、尊敬できる上官もいた。だがそれ以上に、残忍になる人間がいて、残虐なことが当たり前のようにおこなわれていく。戦争は人の精神をぶっ壊すのだ。

 チャーリーはトモに、故郷の家と戦地は別々の世界で「おれたちは二つの世界に、別々に生きているようなもの」「片一方の世界に別の世界をふれさせたくない」という。二つの世界を隔てる一線を、人はもう決して渡ってはならない。

 戦争の残虐さを暴いて訴えながら、兄弟、家族の深い愛情も描いていく。戦争の恐ろしさ、愚かさは心を震わし、しっかり胸に刻まれるが、読後温かさが残る。巧みだ。

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コメント

koine

主人公はトモ・ピースフルじゃなくてトーマス・ピースフルでは・・・?

トモです。Tommoと英語版に書いてあります。

はじめまして。

本当に心にのこる、良い作品でしたよね。

おっしゃるとおり、読んだ後に、不思議な心のぬくもりも覚える作品でした。

あつしさん

はじめまして。
あつしさんのブログでの感想も読ませていただきました。

歴史のなかにいるひとりひとりに物語があるのですね。
そうした物語をたくさん読みたいです。

これからも、よい作品を紹介していってください。


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