課題図書を読む『兵士ピースフル』
高校生向けのの課題図書。表紙の2匹の蝶が印象的だ。
『兵士ピースフル』
マイケル・モーパーゴ作
佐藤見果夢訳
評論社
第一次世界大戦時、イギリス軍はフランスとベルギーの国境付近でドイツ軍と戦った。西部戦線といわれるその戦いに参加した17歳のイギリス軍兵士トモ・ピースフルは駐屯地で、1916年6月24日の夜から翌朝にかけて、夜通し兄チャーリーとの思い出をたどっていく。なぜなら、翌朝には――。
229ページのそれほど厚くない本だが、内容は非常に濃厚だ。前半では、大佐の領地でのトモとチャーリーの少年期の暮らしを描き、後半では、入隊後の軍隊と戦地の状況を伝えている。
3歳年上の兄チャーリーを、トモはつねに追う。青年期までの3歳の年の差は大きい。しかも兄のチャーリーはまっすぐで豪胆な性格で、追い越そうとしても追い越せない偉大な存在だ。トモは兄を慕い誇りに思い、チャーリーはことあるごとに弟をはげましかばう。
大佐の領地での暮らしは貧しく、不条理なことがたくさんあり、家族につらく当たる人もいる。でも兄弟の共通の友であるモリーと三人でいれば楽しい。それにいざとなれば、どの人も救いの手をさしのべる。人間らしいあたたかさはすべての人の中にあった。
ところが、戦争、軍隊はつまりは冷酷な人殺しだ。軍隊には気のいい兵士もいたし、尊敬できる上官もいた。だがそれ以上に、残忍になる人間がいて、残虐なことが当たり前のようにおこなわれていく。戦争は人の精神をぶっ壊すのだ。
チャーリーはトモに、故郷の家と戦地は別々の世界で「おれたちは二つの世界に、別々に生きているようなもの」「片一方の世界に別の世界をふれさせたくない」という。二つの世界を隔てる一線を、人はもう決して渡ってはならない。
戦争の残虐さを暴いて訴えながら、兄弟、家族の深い愛情も描いていく。戦争の恐ろしさ、愚かさは心を震わし、しっかり胸に刻まれるが、読後温かさが残る。巧みだ。
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koine
投稿: lop | 2008年7月24日 (木) 21時38分
主人公はトモ・ピースフルじゃなくてトーマス・ピースフルでは・・・?
投稿: | 2008年8月14日 (木) 12時30分
トモです。Tommoと英語版に書いてあります。
投稿: 読んだ人 | 2012年1月20日 (金) 01時17分