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気高い14歳の女王

筋をどんどんおっていける読みやすいファンタジーだ。その世界にひたり、まわりの景色を眺め、空気を感じることができる。息子と、文字通り、うばいあって読んだ。

『アイスマーク』 スチュアート・ヒル作 金原瑞人・中村浩美訳 ヴィレッジブックス

 シリアは14歳でアイスマーク国の女王となる。南のポリポントゥス帝国が攻めてきて父王が戦死したためだ。シリアは都をすて、民のすべてをひきつれて、亡き母の里ヒポリタ領へ避難すべく旅だつ。シリアの相談役はそれまでの教育係マジョーレと、シリアと同じくらい若い、魔女の息子オスカンだった――。

 14歳の女王。気高く、気丈で、知力武力ともに秀で、公正な目を持ち、統率力もある。だがなんといってもまだ少女だ。弱気にもなるし、重責に押しつぶされそうになり、おびえてもいる。それを民衆に見せまいと強がり、威厳を保ち、自信たっぷりにふるまう姿がいかにもけなげだ。少女の素顔をもちながら、揺るぎない強さを持つ女王として振舞う。そんなシリンに魅了される。
 そして、強気のシリンが、オスカンにだけ内心の心細さ、弱さをみせ、オスカン――彼もまた、自分の力に戸惑い、イラついたりする――が、シリンの不安を受けとめる。その青いくせして熟しているような関係も、胸をときめかせてくれる。
 
 物語前半、ヒポリタ領からさらに北へ北へと、シリアとオスカンが同盟をもとめて旅していく。このあたりは、あまり苦労もせずにうまく進みすぎる気もした。だが、森の王、ウルフ族、ヴァンパイヤ族、ユキヒョウ族など、人ではないものたちが登場し、それぞれの族ならではの暮らし、生き方があるので、興味を持って読んだ。 しだいに、彼らが、合理主義、科学絶対主義に対抗する自然に根付いた神話の生き物であることかわかってくる。
 人と同じ言葉を話し、伝説の生き物であるユキヒョウ族がシリンらに会ったとき、逆にヒトを伝説の生き物が本当にいたとして驚くのもおもしろい。

 一方、合理主義、科学を武器に攻めてくるのは、ポリポントゥス帝国だ。(といっても、マスケット銃、大砲が科学といわれても、いまの世の中では、いささか迫力にかける。でもゾンビとくらべれば、はるかに科学的だ)。また、帝国のベルロム将軍は、神話の生きるアイスマークの民を野蛮人としている。アイスマーク人から見れば、ペルロムのほうがよっぽど残酷で野蛮に見えるが……。この価値観の反転も、先に述べたユキヒョウ族のヒトへの反応と同様におもしろい。

 あとがきによれば、ポリポントゥス帝国はローマ帝国をモデルにしている。私の頭には、正義をかざしておせっかいな争いを起こし、自分たちの正義にしたがわせようとしているだれかが思い浮かんだ。

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コメント

そらこさんの感想を読んでたら、また読みたくなっちゃった。
続編は20年後のお話でしたっけ?楽しみです。

あそびっこさん

20年後、シリアとオスカンは、どうなっているのでしょうね。
息子は、20年後なんて、歳をとりすぎているからいやだと言っております。
1巻は、一応おさまりのいいところで終わっているけれど、まだまだ予断を許さないところもあったので、一気に20年飛ぶのは不思議ですが、楽しみです。

こんにちは。するどく聡明な慧眼と感受性から発せられる言葉を、いつも読書の参考にさせていただいております。何度かTBを試みていたのですが、果たせず、ようやくつながりました。たまたま周波数のあったラジオのようなというか、そんな感じだったのかも知れません。『歩く』『僕らの事情。』『ひなぎくの冠をかぶって』『錬金術』などTBをお送りしているのですが、いつか届く日がくるのでしょうか。TBお返しありがとうございました。やまねこさんたちにはよく来ていただいておりますので、是非、お立ち寄りいただければ幸いです。

ともおさん

はじめまして。ともおさんのBlogも、ときどき拝見しておりました。
TBありがとうございました。
『歩く』『僕らの事情。』『ひなぎくの冠をかぶって』は、きのうTBがとどいており、認証しました。それにしてもつながりが悪いのですね。
ともおさんのBlogでは、定期更新は中止されるということですが、これからもどうか、ゆっくりペースでじっくりと紹介していってくださいね。楽しみにしています。

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