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2006年10月24日 (火)

もう心配しないで『びくびくビリー』

「こどもはのんきでいいなあ!」というのは、心配事でいっぱいの大人が、楽しそうに遊ぶこどもを見て、ときどきつぶやくセリフ。なにをかくそう、わたしも、息子を見てつぶやいたことがある。
こどもがのんきだって! とんでもない。こどもだってたくさん心配事を抱えている。忘れ物をしたらどうしよう、先生にしかられたらどうしよう、目が覚めたときだれもいなかったらどうしよう、おなかがいたいけれどすごい病気だったらどうしよう、大好きなあの子にきらわれたらどうしよう……。でも、「そんなこと、大したことではない。悩み事にはいらない」と大人は思っている。そして、つぶやく。こどもはのんきでいいなあ! でも、こどもには大きな心配なのだ。こどもはのんきなんかじゃない。「びくびくビリー」みたいに、心配事でびくびくしている。

『びくびくビリー』
 アンソニー・ブラウン作
 灰島かり訳 
 評論社

 ビリーは心配屋。心配すると眠られなくなる。おばあちゃんの家にお泊りした夜、おばあちゃんいに眠れないといいにいくと、おばあちゃんは、心配ひきうけ人形をくれた。心配事を打ち明けて枕の下に入れて眠ると、心配事をひきうけてくれる人形だ。それから、ビリーはぐっすり眠るようになった。でも、いく晩かたって、また眠られなくなった。なぜなら……。

 心配ひきうけ人形は、本当にグアテマラに伝わる人形。ネットで調べるとタイにも同じような人形があるようだ。おまじないのようなものだが、人形に心配事を「うちあける」というのが大切だと思う。
 ビリーは、心配ひきうけ人形の事まで心配するのだが、すばらしい解決法を思いつく。それは、心優しいビリーだからこそ生まれた答え。その優しさから生まれた答えは、友だちにまで広がっていく。そう、悩み事は一人で抱えてはいけない。うちあけることが大切だ。

 写実的な絵にファンタジーを紛れこませるのが得意なアンソニー・ブラウンは、この絵本でも、遊び心を多いに発揮して、不安と安心で揺れ動くビリーの内面をユーモラスに描き出している。たとえば、靴で心配する場面(靴の何が心配なのかと思うが、ビリーには心配なのだ)では、靴がベッドから窓の外に向かって行列をつくる。そして壁紙の模様は靴の足跡なのが、いかにもアンソニー・ブラウンらしい。
 しかし、この作品でアンソニー・ブラウンの絵のすばらしさを感じたのは、表紙(ラストにも同じ絵があらわれる)と本文1ページ目の絵だ。両方とも白の背景に、ビリーがポケットに手を突っ込んで歩いている姿だけが描かれている(ビリーの着ているベストはもちろんアンソニーお気に入りのチェック柄)。前者は靴下がずりさがり、後者は靴下をきちんとあげているけれど、あとはほとんど同じだ。でも、ビリーの表情の違いを見てほしい。靴下はずり下がっているけれど、そんなことは気にもとめず、はつらつと、生きる幸せをほとばしらせている様子のビリーと、とぼとぼとして、行き先が不安げなビリー。足音の違いさえ聞こえてきそうだ。
 ビリーの表情がこんなに変わったのは、心配ひきうけ人形に心配を引き受けてもらったからだけじゃないだろう。ビリーの外見はあまり変わらないように見えるけれど、ビリーのなかで、何かが変わったのだ。

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絵本」カテゴリの記事

コメント

この絵本を見て、心配ひきうけ人形というのが、本当に実在する(←しかもとても小さいそうですね)ことを知りました!
そして、それを持っているという友人も身近にいたりして、なんとなくうらやましく思ったんですよね。ラチのらいおんのような存在が、ずっと手元にある安心感が、ビリーを一層はつらつとさせるのかもしれませんね。わたしも欲しいです☆

私も、小さなお人形のお守りを持っています。ペルーのだったり、バリ島のだったり。ものすごく困ったときに頼みなさいといただきました。でも、まだ頼んでないんです。そんな簡単に頼んじゃいけないな、と思いながら今日まで来ました。それを持っているだけで安心するんですよね。
ビリーもきっとそうなんでしょう。アンソニー・ブラウンのあたたかさが見えてきますね。

このお人形、うちにあるかもしれない。次女のクラスにグアテマラの子がいたことがあったから(国際学校じゃないです、普通の公立小学校でした)。
ヘアバンドにこれに似た人形がい〜〜っぱいついたのは、長女が持ってます。

寝る時のおまじない、子どもにはよく効きますよね。

フラニーさん

いざとなったら頼りになる。そんなものがあると安心できるのですね。子どものころ、神社でもらってきたお守りをランドセルにつけて、これがあるから大丈夫と、心から信じていたことを思い出しました。
『ラチとらいおん』息子が小さいころ読んで、マスコット人形を作ったのを思い出して、引っ張り出してきました。なつかしいです。

マーガレットさん

世界のいろいろなところで、同じような人形があるのですね。簡単に頼み事をしないけれど、あるだけで安心できる。素敵なことだと思います。そうした人形を贈る人のあたたかさも感じます。

ぎねびあさん

娘さんがグアテマラの子からもらわれたのですね。いいなあ。
ネットで見たら、入れ物も絵本とそっくり同じで、感激しました。
http://www.globalmarketstore.com/moreworrydolls.html
ヘアバンドもありますね。

絵本にでてくるおばあちゃんは、グアテマラからの移民かしら?などと考えたりします。

はじめまして。「わくわく本」の海五郎といいます。
この絵本、なかなかすてきですよね。
そう、靴下の違いにはぼくも感心しました。
アンソニー・ブラウンの子どもを見る目の細やかさが出た、とてもいい絵本だと思います。
では、これからもよろしく。

海五郎さん

はじめまして。
いらっしゃいませ。

『びくびくビリー』外から見たら、あまり変わっていないけれど、内面が変わっている姿がさりげなく描かれていると思います。
アンソニー・ブラウンの作品はどれも好きですが『こしぬけウィリー』が、とりわけ好きです。

海五郎さんのBlog拝見しました。ブログのワークショップと言うのが面白いです。
また、ときどき遊びにいかせてくださいね。

トラックバックもありがとうございます。
こちらからもTBさせてください。

今頃、へんなコメントでごめんなさい。
ペルーやバリ島のは、身代わりではないただのお人形でした。身代わりは『トラブルドール』というグァテマラのインディオのでした。開けたことのない袋を恐る恐る開けると、なぜか日本語の説明書きが入っていて、小さなお人形が6つ入っていましたよ。
何で日本語の説明なの?とか、困ってないのに開けたからもう効かなくなったかも・・とか家族で話題になりました。
間違った情報で気になって、今頃メールしました。すみません。

マーガレットさん

ありがとうございます。
日本語の説明書きとは、面白いですね。日本人に人気なのかな?
日本の神社のお守りで、好奇心から中身を見てしまって、バチがあたるかなあなどと、同じように友だちと心配したことを思い出しました。 

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» びくびくビリー [わくわく本]
びくびくビリー アンソニー・ブラウン/作 灰島かり/訳  評論社     ビリーはとっても心配屋。いろんなことが気になって、ベッドに入ってもなかなか眠れません。パパやママは「しんぱいないよ」って慰めてくれるけれど、それでもやっぱりビリーはびくびくでした。  ある日、おばあちゃんのところに泊まりに行ったビリー。自分の家でないと、いつもよりもっと心配になってしまいます。ビリーは自分のことを弱虫だと思ったけど、おばあちゃんに「ねむれない」って話しました。  おばあちゃんは「よわむしなんかじ... [続きを読む]

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