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2006年10月14日 (土)

Gold Rush!

心のそこから愉快になれる本。おすすめです。

Gold Rush! ぼくと相棒のすてきな冒険
 シド・フライシュマン作
 金原瑞人・市川由季子訳
 矢島眞澄絵

 1849年1月29日、ボストンから南アメリカ大陸の南端をまわってカルフォルニアへ向かう帆船レディ・ウィルマ号に、ふたりの密航者が乗っていた。12歳のジャックと執事のプレイズワージィだ。
 両親をなくしたジャックは、うら若いアラベラおばさんの屋敷で暮らしていたが、おばさんの財産は次第になくなり、とうとう屋敷を売るしかなくなった。そんなときカリフォルニアから流れてきたのが、黄金の噂。ジャックは金鉱で一山あてて、おばさんを助けようと考え、執事と家を出た。しかし、船に乗る前に財布を盗まれ、やもえず密航したのだ。
 船長は、「海の猛牛」の呼び名をもつ豪胆な男で、、同じくカルフォルニアへ向かう「ウミツバメ号」とどちらが早くカルフォルニアにつくか競争していた。船長に密航を打ち明けたふたりは、ボイラーで石炭をくべて
はたらき、船賃を稼ぐことになる。

 実に開放的で楽天的な物語だ。
 カルフォルニアでひと財産もうけようと集まるのは、野生味あふれる荒くれ男ども。そのなかでは、育ちのいいお坊ちゃまジャックと、白い手袋に山高帽、黒いラシャの上着の執事プレイズワージィは、かなり浮いた存在だ。だが、荒くれ男たちは、その野蛮な身なりと言葉をとりはらえば、素直で人情味あふれ、あたたかい心を持っている。一方、ジャックと執事も、その上品な身なりと言葉をとりはらえば、不屈の精神をもっていてたくましい。どの登場人物も魅力的だが、わたしのいちばんのお気に入りは、冷静沈着なプレイズワージィ。何が起ころうとすまし顔で切り抜ける姿は、愉快で小気味よい。
 金鉱をもとめてカルフォルニアを旅するうちに、ジャックと執事は、次第に荒くれ男たちにそまっていく。とくにプレイズワージィは、帽子、上着、手袋、傘と身の回りのものをひとつひとつ離していくことで、執事の皮をはぎ、まる裸の自分を知る。そして今度は、赤いネルのシャツを着て、ひげをはやし、一人前の金鉱堀になる。また、ふたりの関係も、ぼっちゃまと執事という主従の一線をひいた間柄から、気の置けない相棒へと変わっていく。この変化が無理なく描かれ、ジャックの気持ちによりそって読むものの、熱い涙をさそう。
 物語は、小さな楽しいエピソードを積み重ねて、主人公たちにとって都合よく、とんとん拍子に進んでいく。もちろん世の中そんなに甘くはなく、これはおとぎ話だ。でも、その底抜けの楽天さは心地よくて、生きる糧ともなる。

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コメント

読む本がたまっているのに、そらこさんの書評を読んだら、読みたくなりました。借りてこようっと。
いつも素敵な本の紹介ありがとう。

マーガレットさん

読みたい本がたまっているの、わたしも同じです。
この作品は楽しいので、すぐ読めてしまいますよ。読まれたら、感想をおきせくださいね。

そらこさん
図書館に予約してわかりました。「十三階の海賊」の作家じゃありませんか。それはますます期待度大です。こっちもおもしろかったから。

マーガレットさん

そうです!! 『十三階の海賊』の作者です。わたしもそれで期待して読んだら、期待通りでした。

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