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シュクラーン ぼくの友だち

読書感想文の課題図書候補になりそうな、いや、ぜひ、なってほしい1冊。
だって、たくさんの子どもたちが読んでくれるんだもの。

『シュクラーン(ありがとう) ぼくのともだち』
 ドリット・オルガット作
 樋口範子訳
 丹地陽子挿絵
 すずき出版

 ガブリエルは12歳のユダヤ人。5ヶ月前にアルゼンチンから、イスラエルのテルアビブ郊外に引っ越してきた。アルゼンチンでユダヤ人として差別をうけて育った両親が、子どもたち――ガブリエルと妹のダニエラに同じ思いをさせたくないと選んだ移住だった。
 しかし、ヘブライ語がまだうまく使えず新参者の兄妹を、ユダヤ人の子どもたちは意地悪をし、兄妹は仲間に入れてもらえない。
 孤立するガブリエルと偶然出会い、友だちになったのは、アラブ人の少年ハミッドだった。ハミッドは兄と、兄の友だちといっしょに果樹園の作業場に寝泊りして、肉体労働をして働いていた――。

 仲間であるはずのユダヤ人からはいじめられたガブリエルが、ただひとりみつけた友だちは、ユダヤ人が見下したり恐れたりするアラブ人だった。ユダヤ人への偏見を逃れるための移住が、皮肉な成り行きとなったのだ。
 ガブリエルがアラブ人のハミッドを信頼できたのは、孤独なときにさしのべられた友好の手だったこと、そして、イスラエルに移住してまもないためにアラブ人に対する偏見が植えつけられていなかったことからだろう。ガブリエルは、人種や宗教をこえ、まっさらな目でハミッドの人間性を、見ることができたのだ。
 しかし、偏見をこえることは難しい。医師で、公正な目をもつガブリエルの父さんでさえ、ハミッドがアラブ人と知ったとき、眉をひそめた。だが、この父さんのすばらしいところは、すぐにだめと決めつけずに、ハミッドを自分の目で確かめようとしたことだ。

 さて、この物語は、イスラエルという特殊な場所を舞台に描いている。イスラエルにおけるユダヤ人とアラブ人の関係、キリスト教徒とユダヤ教徒の関係もわかりやすく説明されている。
 しかし、こうした問題はじつは、どの社会にも普遍的に存在するのだ。自分も含めて、自分の周りをみわたしてみよう。子ども社会で、地域、職場、サークル……大人社会で、なんらかの形で群れた人々は、異質なもの、新しいものを排除したがる傾向にある。意識的にも、無意識的にも……。とくに、感情をむき出しにする子ども社会では、はっきりわかる。それは、もしかして、自分を守るための本能ではないだろうか。そう、だれでも、いじめる側にたちうる。人より優位に立ちたいという思いは、だれにでもあるのだ。

 ガブリエルとハミッドがはぐくんだ友情は、やかて大きな力となる。
 あたたかく感動的なラストだが、決して安易なハッピーエンドではない。作者は、最後まで、ハミッドを尊厳ある人として描く。
 友情とはたがいに尊厳の目をむけるとから始まるのだ。

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