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世界でたったひとりの子

 長生きで死ぬまで若々しく元気でいたいと、願う人は多い。しかし、その願望がかなったとき、人々は心を満たすことができるだろうか。

『世界でたったひとりの子』
 アレツクス・シアラー作
 金原瑞人訳
 竹書房

 医療が発達した近未来が舞台。人々は老化防止薬を服用することで、長寿を手に入れ、死ぬときまで老けることなく元気に生きられるようになった。だが、一方で人々は不妊となり、子どもはまれに生まれるのみ。希少の子どもは誘拐されやすかった。金持ちに高額で売られたり、子どものいない家庭にレンタルされるのだ。
 タリンもレンタルされる子どものひとり。物心ついてからいっしょにいる保護者のディートは、賭けでタリンを手に入れたという。賭けの相手がタリンとどういう関係なのかディートも知らない。タリンは、ディートに会う前にどうしていたか、両親は誰なのか、まったくわからない。自分の年齢さえもわからないのだ。
 ディートは最近しきりに、PPインプラントをタリンに勧めるようになった。PPインプラントとは、子どものまま成長をとめる手術で、インプラントを受けたものは、死ぬまで子どもの体でいられた。だが、タリンは成長したいと思う。
 そのころ、タリンをつけねらう男がいた――。

 もしかして近い未来に本当に起こるのではないかと思われるような架空世界。その世界を描くことで、現実社会の人々の問題を浮き彫りにする。生きる幸せと不安について、つきることのない欲望について、生命の誕生、成長、老いについて。

 タリンは、おそらく10歳前後になったのだろう。幼いころはディートに従順だっただろう彼もしだいに、自分がなにものかを知り、自分自身でいたいと願い始める。しかし、ディートから離れても、タリンに行くところはない。巷には金目当ての誘拐者たちがうろつき、警察に頼っていっても保護者の書類を持つディートのもとに送り返されてしまう。
 稀少価値な子どものモノ化、ペット化。それは、少子化の進みお子様産業が盛んなわたしたちの世の中が、はらんでいる危険ではないだろうか。タリンは居場所がなく、自分を見失ったタリンは、いまの子どもたちの現実の姿ともなりえる。わたしたちが、子どもに何かを望むとき、もしかして無言のうちに強いていないか、ペット化していないか、そんなことを考えさせられる。

 ところで、タリンを商売道具にして生きているディートはどうしようもない男だが、彼がタリンに説教する言葉には毒のある真実が含まれていて、思わずうなづかされる。
 
 自分がいまのままの状態であと100年生きるとしたら、果たして幸せだろうか。

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コメント

これはおもしろそうですね。図書館にあるかしら。
ぜひ、今度見つけて読んでみます。

ぱいぽさん 

はじめまして。

ぱいぽさんのブログも拝見させていただきました。
ときどき、お邪魔させてくださいね。

´ω`)ノドモx

課題図書でしたx
勉強になりますx

お読みいただき、ありがとうございました。m(_ _)m

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